「あしたのジョー」と聞くと誰もが真っ白になったジョーを思い浮かべますが・・・

なぜそうなったのか、誰と戦ってそうなったのか、その戦いに至るまでの道程はどんなものか。

それを全て話せる人は多くないでしょう。

「あしたのジョー」・・・特に「あしたのジョー2」は人間ドラマを描いたすばらしい作品。

是非、あなたも1度見て下さい・・・ってことで今回は「あしたのジョー2」の魅力を振り返ります。

 

 

「あしたのジョー」、「あしたのジョー2」の違い

「あしたのジョー」は、今更語るでもなく、有名すぎる作品のひとつだと思いますが「あしたのジョー2」というアニメはご存知でしょうか。

1が丹下段平と矢吹丈の出会いから、力石との戦いまでを描いた作品であるのに対し、

2は力石との戦いの後、矢吹丈が復活してから、世界チャンピオンホセ・メンドーサと戦うところまでが描かれました。

 

あしたのジョーと言うと、大概の人は、

力石との戦い、もしくはジョーが真っ白な灰

になったシーンをあげられると思われますが、1と2との目に見える違いは、まず絵のクオリティの違いがあげられます。

 

1に比べてかなりクオリティがあがっているのです。

しかし本当に伝えたい違いはそこではなく、中身のお話。

原作にはないオリジナル部分も相まって、2はボクシングアニメというよりむしろ人間ドラマとして見ても非常に楽しめます。

 

 

「あしたのジョー2」はどんな作品?


高森朝雄/講談社・東京ムービー新社
アニメ「あしたのジョー2」より引用

 

矢吹丈が泪橋の丹下拳闘ジムにひょっこり返ってきて、再びボクサーとしての道を歩みます。復活するやいなやの快進撃で、一見順風満帆に見えた再起の道。

しかし力石を死へと追いやったテンプルブローが、罪の意識からか無意識的に打てなくなってしまっているジョー。

その事実がボクシング界に知れ渡り、対策されてしまいます。

 

「違う、俺は力石を吹っ切ったんだ」

と、無理やりテンプルへの一撃を放つや否や、拒否反応を起こして吐いてしまうジョー。

 

そんな事では客は呼べないと、遂に対戦相手すらいなくなってしまいます。

力石を吹っ切ったはずなのに、体がそれを許さない。

その葛藤にジョーは悩まされるのです。

 

 

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「あしたのジョー2」で描かれた対戦相手達のその後

その後、ベネズエラの無冠の帝王カーロス・リベラと出会い、スパーリングをするのですが、その際もテンプルに打った直後吐いてしまいます。

しかし戦闘態勢を崩そうとしないジョーに、カーロスが気づき、スパーリング続行。

気がつけばジョーはテンプルに打っても吐かないようになっていました。

ようやく自分の心の中の力石の亡霊から逃れる事が出来たのです。

 

このように、ただのボクシング漫画ではなく、ジョー他登場人物の心のうちに重きを置いて描かれているのが特徴的。

それとは逆に、ジョーの練習シーンは比較的あっさり目にかかれています。

試合にしても、1話2話で終わるものがほとんど。

 

今のスポ根アニメ・・・例えば「弱虫ペダル」なんかは試合中に回想をはさみ、はさみ、はさみ尽くしてその人間もようを描くと共に、試合から目を離せなくなるように構成されています。

そのような構成の仕方とはかなり違う・・・と言うことです。

 

そしてそのカーロスも、世界戦で重度のパンチドランカーになってしまいます。

しかもカーロスのセコンドは「既に矢吹丈に壊されていた」と明言します。

それを知ったジョーは、もの悲しい表情を浮かべます。

 

力石の次はカーロス。

自分と戦った相手はみな壊れていく、そんな想いを胸に。

かつて戦ったウルフ金串も、自分に顎を壊されて、落ちぶれてしまったと。

 

 

次の対戦相手、金竜飛は、戦場で本当の地獄を味わってきたボクサーで、本当の飢えを知っている、食べないのではなく食べられないのだと、減量で苦しんでいたジョーに告げます。

この時はじめてジョーは、勝てる気がしないと弱音を吐いていますが、試合中に涙ながらに力石への思いを金にぶつけます。

力石は食べられないんじゃない、自ら食べなかったんだ、だからお前に負けるわけにはいかない、と。

 

そしてジョーに敗れた金もまた、引退へと追い込まれてしまいます。

 

 

その後、ジョーはレオンスマイリーに勝利。

試合後のレオンとちょっとした談話をし、安心したジョーに入ってきた知らせが、レオンスマイリーが交通事故で亡くなったというものでした。

また、自分に関わったものが不幸な目に。

このあたりのジョーの心情もより具体的に描かれています。

 

そして試合の合間合間に、ジョーがパンチドランカーに蝕まれていくシーンが描かれています。

ジョーをずっと見てきた、白木ジム会長、白木葉子に、あなたは重度のパンチドランカーだと告げられますが、それがどうしたとつっぱねるジョー。

愛する人をいかせるわけにはいかないと、告白をした葉子をやさしくどかして世界戦へ向かいます。

 

そこで世界チャンピオン、ホセ・メンドーサと戦い、ご存知真っ白な灰になるわけですが、最初は見下していたジョーに次第に恐怖を抱くようになっていくホセの描写はより細かいものに仕上がっています。

最終的には白髪になり、顔もボロボロになっています。

 

それ以外でも、

ジョーを半ば騙す形でお金を借りたウルフ金串が世界戦の前にそっとそのお金を返してきたり

ゴロマキ権藤という人物が男が惚れた男としてジョーに色々と協力したり

アニメオリジナルキャラのルポライター須賀もまたジョーを追いかけたり

自身の引退式で、ボクシングを吹っ切るために、ジョーにスパーリングを依頼するマンモス西がいたり

人間関係、人と人との関わりがより深いものとなっています。

 

ただのボクシング漫画にとどまらず、様々な人間ドラマが、矢吹丈を中心として渦巻いていく、涙なしでは見られない作品に仕上がっているのが、アニメ版あしたのジョー2だと僕は思います。

是非とも偏見や先入観を抱かずに見て欲しい作品です。