物語には、魅力的なキャラクターが多数登場します。
今回は、その中でも「魅力的な老女キャラクター」についてお話させて頂きます。
年を取ったからこそ出せるババアの味を堪能せよ!
魅力的なアニメのおばあちゃんキャラ
「バジリスク ~甲賀忍法帖~」お幻
(C)山田風太郎・せがわまさき・講談社/GONZO
アニメ「バジリスク ~甲賀忍法帖~」より引用
魅力的なおばあちゃんと聞いて、最初に思い出すのは、「バジリスク ~甲賀忍法帖~」に登場する、伊賀のお幻(おげん)です。彼女は、忍集団・伊賀を纏める頭領。
小柄で皺だらけの老女ですが、精鋭達を束ね、尊敬される頼もしいリーダーです。
彼女の孫娘は、本作のヒロイン・朧(おぼろ)。
忍者の頭領になる身でありながら、体術も忍術も使えない、ごく普通の女の子です。
ただし、生まれつき持っている「破幻の瞳」(はげんのひとみ)を除いては……。
朧はどんな忍術も、見つめただけで破る不思議な目を持って生まれました。
しかし、それは自分で修行して得た能力ではありません。
場合によっては、味方の忍術を破る諸刃の剣になってしまう……相手が可愛い孫ながら、伊賀の未来を考えたお幻は、朧に「七夜盲の秘薬」を渡します。
いざという時は、その薬で自分の目を塞げと。
冷静に可能性を分析し、先手を打って対処する。
まさに、リーダーらしい先見性だと思います。
実際に朧は、やがて自分の目をその薬で塞ぐことになります。
それが、結果的に伊賀と甲賀の戦いを左右することに……。
それでいながら、お幻は孫娘に、油断出来ない腹心・天膳(てんぜん)に注意するよう忠告していました。
リーダーとしての行動と、祖母として、孫を案じる気持ち。それを両方持っているからこそ、お幻は素晴らしい頭領なのでしょう。
ちなみに、今は皺だらけの老女ですが、若い頃のお幻はたっぷりした黒髪の、華やかな美女でした。
そして彼女は昔、敵の甲賀頭領の、弾正(だんじょう)と忍ぶ恋をしていました。
二人は甲賀と伊賀の和睦を目指していましたが、折り悪く「天正伊賀の乱」が勃発。
その中で二人は誤解したまま、引き裂かれてしまいました。
実はそれは、伊賀の天膳の策略だったのですが……。
お幻が天膳を警戒したのは、正しい直感だったのです。
引き裂かれた弾正とお幻ですが、数十年後に、なんとお互いの孫同士が恋をしました。
和睦を夢見る若者達を、穏やかに見守る老人達。
しかし、皮肉にもそのタイミングで、不戦の約定が解かれてしまいました。
将軍の命令で、殺し合いをするよう命じられた両一族。
忍のリーダーとして、逆らうことは許されません。
安倍川のほとりで、戦う老人二人。
かつて恋し合った二人は相討ちとなり、同時に命を落とします。
寄り添ったまま、川を流れていく弾正とお幻の骸。
その顔が一瞬、若い頃の顔に変わります。
数奇な運命で引き裂かれ、結局互いを殺した二人。
お幻が最後に見せた、哀しげな表情が印象に残っています。
そしてネタバレになりますが、愛し合う孫達も、やがて敵として対峙する運命にありました。
忍者としての理不尽さ、哀しさ、ままならなさ……そんな印象を、弾正とお幻は、強烈に視聴者に残しました。
登場場面は短いですが、ある意味作品の世界観を象徴する二人です。
若い頃の姿と、今の老女の姿。
二度楽しめるのも、お幻の魅力の一つでしょう。
老獪さや豊富な知識、それに、老人ならではの落ち着き。
若者はもちろん、魅力的な老人も、作品に欠かせない存在だと感じます。
「天空の城ラピュタ」ドーラ
そして次に思いつくのは、「天空の城ラピュタ」に登場する女空賊・ドーラです。
お下げを二本結った、恰幅の良い初老の女性ですが、とにかくパワフル。
息子達より早く走り、車を暴走運転し、邪魔な群衆は手榴弾を投げつけて黙らせる!
空賊らしく、お宝への執着心はかなりのもの。
財宝が眠る天空の城・ラピュタを目指して、軍との戦いに巻き込まれていきます。
ワルぶった言動が多いものの、軍関係者やムスカ(一番の悪役)とは違い、どこか愛嬌と、人の良さが見え隠れするのが良いところ。
共に空賊をする部下や息子達も、憎めない人柄ですが……リーダーのドーラも、まだ幼い主人公やヒロインを気遣うなど、徐々に人間らしさを見せるようになります。
女の子のシータを自分と同じ部屋に寝起きさせたり、自分の服を与えたりと、さりげなく優しさを見せる場面が。
まだ子供であり、堅気のパズー(主人公)とシータ(ヒロイン)を、本格的に悪の道へ進ませまいと考えている様子。
ですが、彼らの度胸の良さや、性質の良さは買っているよう。
子供だからと侮らず、きちんと相手を見て判断しているのでしょう。
敵陣に向かうパズーに、そっと大砲を渡す場面は、さすが裏社会の女!という心憎さ。
くどくどした励ましはせず、「死ぬんじゃないよ」と言うのも、いかにも彼女らしい激励ですね。
最後は、生還したパズー達を抱きしめて、喜び合いました。
ギリギリまで二人の帰りを待ったり、人情があるのが素敵なドーラさん。
彼女の亡き夫は、一体どんな男性だったのか、想像が膨らみます。
三人の息子を見ていると、何となくイメージが湧きますが……。
ちなみに暗号を解読したり、チェスを楽しんだりと、知的な面もあります。
「西洋の計算機だよ」と、算盤を使う場面があったのには驚きました。
年を取ったからこそ出せる味・・・それを備えた魅力的なおばあちゃんキャラクター。
物語を彩るいなくてはならない存在として、しっかり爪痕を残したキャラクターですね。