大人気漫画をアニメ化した、「ゴールデンカムイ」。
毎週毎週、放送を楽しみにしている方も多いと思います。
もちろん私も、その一人。
今回は少し前に亡くなった名キャラクター、二瓶鉄造(にへい てつぞう)をクローズアップさせて頂きます。
残念ながら命を落としましたが、いまだに惜しまれるほどに、魅力的な人物でした。
強烈な生き様、数々の名言、そこはかとないユーモア……。
そして、全力で戦った末の最後。
尾形上等兵の再登場は嬉しいけれど、それとは別に「二瓶ロス」はしぶとく残っています。
DVDやブルーレイ発売を控えた今、改めて、その魅力に想いを馳せてみましょう。
二瓶鉄造とは?
©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
アニメ「ゴールデンカムイ」より引用
ゴールデンカムイの主人公・杉本達と戦い、命を落とした猟師です。
いや、正しくは「猟師の中の猟師」と言うべきでしょうか。
声の担当は、大塚明夫さんです。
厳つい顔に、特徴的な灰色の髪。
赤いチェックの服に、毛皮の脛当て。
コロコロのアイヌ犬が相棒です。
もともと、冬眠中の熊も魘される「悪魔の熊打ち」として有名でした。
弾が一発しか込められない旧式の村田銃で、見事に熊を仕留める……。
「一発だから、肝が据わるのだ」と、巨大熊の前に仁王立ちする姿には、畏敬の念がこみ上げます。
しかしある時、猟師を殺して獲物を横取りする卑怯な連中に狙われます。
猟師の仕事に誇りを持つ二瓶は、これに激怒。
一つずつ追い詰め、撲殺しました。
しかし当然法の裁きを受け、網走監獄に収容され。
さらに「のっぺらぼう」の手で、体に埋蔵金の在処を示す刺青を入れられました。
やがてチャンスを得て、他の囚人と共に脱獄。
アイヌ犬のリュウと共に、北海道で熊打ちをしていました。
怪我をして倒れていた、マタギ出身の兵隊「谷垣」を助けたことで、物語に登場します。
二瓶の目的は金塊ではなく、絶滅したハズの白い狼。
マタギの血を刺激された谷垣と共に、狼「レタラ」を追います。
猟師の中の猟師
脱獄した理由を、二瓶は「山で死にたかったから」と答えました。
刑務所ではなく、山で自然と戦い、最後は獣に食われて、自然の一部になりたい……それが理想の死に方だと話します。
そのせいか、彼の決め台詞(?)は「獣の糞になる覚悟は出来ているだろうな!!」です。
あと、なぜか「勃起!!」も……。
意外とお茶目さん
狩りや戦いの場では狂気スレスレの殺気を見せますが、普段は意外にお茶目で、お喋り。
冗談を飛ばすことも多いです。
小屋で熊料理(心臓焼きや、血の腸詰め)を振る舞いながら、谷垣に「精がつくぞ。天井をブチ破らないように気をつけろよ。ワハハ!」と、得意の「勃起ジョーク」をかましたり。
また、真冬の川で水浴びをしながら「寒くて縮んでいるだけだ。本当はもっと立派だ」と、ジョークを飛ばしたことも。(相手に死刑囚だとバレて、緊迫した状況にも関わらず)
犬のリュウが狼の気配に怯えていると、「そいつはもう、湯タンポにしかならんな」と、余裕で言います。
それでいながら、死にかけている時も「湯タンポの割に、頑張ったな」とリュウを撫でて……。
優しさと情も持つ、懐の深い男。
ワイルドな、理想の親父。
二瓶は、そんな人物なのだと感じました。
さりげない優しさ
©野田サトル/集英社・ゴールデンカムイ製作委員会
アニメ「ゴールデンカムイ」より引用
故郷を捨て兵士になったものの、山でマタギの魂を思い出した谷垣。
作戦中に怪我をし、偶然出会った二瓶と行動を共にするうちに、どんどんマタギに戻っていきます。
猟師に戻るべきか、それとも兵士として、軍に戻るべきか……。
そんな彼に「狼を仕留めたら、毛皮を手土産に故郷へ帰れ」と勧める二瓶。
谷垣には、やはりマタギの生き方が似合うと感じたのかもしれません。
また、ヒロインの少女・アシリパさんを谷垣に任せ、自分は杉本や白石を始末する側になったことも。
「連れて行け。悲鳴が届かないくらい遠くへな」小さい子に、残酷な場面を見せないよう配慮する理性があります。
それは例え殺し合いの中でも。
これが、本当の紳士というものかもしれません。
その直後、杉本達には逃げられてしまいますが。
獲物への執着
「俺は、熊より獲物に執着する」と断言する二瓶。
獲物との知恵比べを楽しみ、冬の屋外(しかも北海道!!)で一晩中見張ることも厭いません。
彼の目的は「日本狼が見た、最後の猟師になること」
「これは、獣と獣の殺し合いよ」と不敵に笑う二瓶。
必ず自分が勝つ!という、自信に溢れています。
今まで数多くの熊と戦ってきた、経験があるからでしょうか。
杉元と交戦し、片手の指を斬られても怯まず、逆に相手の刃物を掴み笑みを浮かべます。
まさに、捨て身の戦法。
作戦通り、仲良しのアシリパさんを餌にしたことで、姿を現したレタラ。
銃の照準を合わせ難いようジグザグに走る姿に、「素晴らしい!銃というものを理解しているのか」「最後の狼に相応しい」と、喜びを露わにする二瓶。
しかし、まさに引き金を引こうとした瞬間、後方から思わぬ衝撃が……。
なんと、もう一匹の灰色の狼が、二瓶の首の急所に噛みつきました。
驚きに目を見開く二瓶。
灰色狼は雌で、どうやらレタラの番(つがい)のようでした。
「女房にとっちゃ、男同士の対決なんて、知ったこっちゃないか。やはり女は恐ろしい……」と、苦笑いする二瓶。
それでも最後まで全力で戦ったことで満足し、目を閉じます。
命尽きた彼の許へやって来たのは、弟子とも言える谷垣。
怪我した足を引き摺り、二瓶へ「コレヨリノチノ ヨニウマレテ ヨイオトキケ」と、マタギの送り言葉を唱えました。
杉元、アシリパさん、白石、谷垣、そして愛犬のリュウに看取られてこの世を去った、二瓶鉄造。
真の猟師と言うべき彼の生き様は、谷垣と視聴者の心にしっかりと刻まれました。
そして後に、二瓶の形見である銃が、谷垣の窮地を救う大切なアイテムとなります。
残されたリュウも……。
最後の最後まで、全力で走り抜けた二瓶。
やっぱり、死なせるには惜しい漢(おとこ)だったよなあ……という思いは、今も消えません。
せめて今は安らかに、眠ってくれることを願います。
望み通り、北海道の自然の一部になって……。