復讐……それは暗く恐ろしく、黒いエネルギーを秘めた行為です。
しかし負の感情は強く、人を惹き付ける、魅力あるものでもあります。
今回はそんな、復讐絡みの作品をご紹介します。
時にはダークな物語に、思い切り浸るのも良いかもしれません。
ベルセルク
© 三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/ベルセルク製作委員会
アニメ「ベルセルク」より引用
言わずと知れた、大河ファンタジー作品です。
そして、復讐物語の王道でもあります。
作品の舞台は、中世ヨーロッパを思わせる戦乱の世界。
主人公のガッツは傭兵団の団長に育てられ、幼い頃から戦いの中で腕を磨いてきました。
やがて天涯孤独の身になった彼は数々の戦場を渡り歩き、15歳にして腕利き傭兵になります。
そんなガッツが出会ったのが、傭兵団「鷹の団」と、リーダーのグリフィスでした。
© 三浦建太郎(スタジオ我画)・白泉社/ベルセルク製作委員会
アニメ「ベルセルク」より引用
グリフィスはまだ若く平民ながら、美貌と知略に優れ、カリスマ性で多くの部下を心酔させていました。
荒々しいガッツを気に入り、部下になれと勧誘するグリフィス。
腕ずくで彼を負かし、とうとう仲間にしてしまいます。
「鷹の団」は若者ばかりで、しかも皆希望に溢れていました。
戸惑いながらも徐々に馴染み、自分の居場所を見つけていくガッツ。
そして「のしあがり、やがて一国の主になる」と本気で語るグリフィスに、魅了されていきます。
それから数年、手柄を立てて大出世し、とうとうミッドランド国の正規軍になった鷹の団。
グリフィスは爵位を得ます。
知略のグリフィスと強さのガッツ、二人の間には強い信頼関係が育ち、何もかも上手くいっているかに見えました。
しかし、いつ頃からかガッツの中には迷いが……。
グリフィスを追うだけではなく、彼と肩を並べられる、対等な男になりたいと。
居心地の良い居場所と仲間を捨て、一人旅に出るガッツ。
自分が居なくても、グリフィスはビクともしないと考えながら……。
しかし自分自身も気付かないうちに、グリフィスにとってガッツはかけがえの無い理解者であり、相棒になっていました。
そのガッツが去るということは、イコール自分への裏切りと感じたグリフィス。
グリフィスは精神のバランスを欠き、この時から転落が始まります。
そしてガッツと再会した時、グリフィスは重罪人として囚われ、度重なる拷問でボロボロの身体になっていました。
これは自分のせいかと、動揺するガッツ。
そしてガッツを見上げる立場になってしまったことに、例えようもない苦痛を感じるグリフィス。
「あいつとだけは、対等でありたい」と互いに思うせいで、皮肉にも離れてしまった二人。
もう一度、誇りを取り戻したい。
例え、人の道を外れても……グリフィスはその思いから、魔王達の誘いを受けてしまいます。
仲間達を生け贄に捧げ、新たな魔王として転生したグリフィス。
仲間達の死に絶望するガッツを見下ろし、彼の恋人を目の前で犯すことでガッツに別れを告げました。
そしてガッツは重症を負いながらも生き延び、グリフィスへの復讐を誓います。
追う者と追われる者が逆転した、二人の関係。
認めているからこそ、決して無視出来ない……そんな魂の片割れとも言うべき、ガッツとグリフィス。
今や人間以上の存在となったグリフィスは、この世の魔物全てを従え、また人間世界の王にもなる為、着々と準備を進めています。
敵も味方も惹き付け、自分の思い通りに動かす姿は、もはや神の領域。
対してガッツは人間のまま地上を歩き、グリフィスを探し求めています。
新しい仲間達と敵を倒し、怪我を負いながら、それでもグリフィスへの復讐を諦めないガッツ。
何もかも正反対な二人は、これからも磁石のように引き合うのでしょうか。
「全てを超越した存在」として、もはやガッツなど眼中に無いという態度のグリフィス。
しかし時に、ほんの少し感情を見せることがあります。
グリフィスを動揺させる可能性があるとすれば、それはきっと「魂の片割れ」とでも言うべき、ガッツ以外にいません。
新たな仲間と魔法使いのサポート、そして命を削る呪いの甲冑を手に入れ、傷つきながらも進み続けるガッツ。
しかし度重なる戦いは彼を蝕み、味覚障害や視力の低下、震えなど、少しずつ身体を壊し始めています。
果たして壊れ切る前に、グリフィスの許へたどり着くことが出来るのか……。
原作もアニメも、まだまだ完結まで時間がかかりそうな本作。
ガッツの復讐の行く末を、最後まで見守りたいと思います。
願わくば、復讐の後に穏やかな幸せがあると良いのですが。
今の仲間達と楽しそうにしているガッツを見ると、つい願わずにいられません。
人魚の森
高橋留美子/小学館・テレビ東京、トムス・エンタテインメント
アニメ「人魚の森」より引用
そしてもう一作挙げたいのは、深夜アニメ「人魚の森」の中の、同名話です。
一~数話完結の本作ですが、中でも「人魚の森」は、おどろおどろしい中に切なさが見える、壮絶な復讐話です。
主人公の湧太と真魚は、人魚の肉を食べ不老不死になった男女です。
あてもなく旅をしている最中、真魚が車に轢かれ絶命。
彼女の死体は老医師の手で「人魚屋敷」に運ばれます。
そこに住んでいたのは、若い娘と老女の二人。
若い女は真魚の腕を切り、自分の腕と交換しようとしますが、間一髪で真魚が蘇生します。
そして真魚を探す湧太は、忍び込んだ人魚屋敷で犬の化け物に噛まれ、やはり命を落とします。
目覚めた湧太が居たのは、屋敷の中の座敷牢。
そして若い娘と老女が双子の姉妹であり、姉は人魚の生き血で、見た目だけは年をとらなくなったことを知ります。
長生きする為、真魚の不死身の身体を自分の身体とすげ替える、という姉の登和。
それを止める為、妹の佐和は隠し続けた人魚の死体の許に皆を案内します。
人魚の傍には、遠い昔に人魚を食って化け物になった人間、「なりそこない」が。
力を合わせて、なりそこないを仕留める湧太と真魚。
そして登和は人魚の肉を切り、妹の佐和に「食え」と差し出します。
実は登和が人魚を探していたのは、自分の為ではなく、妹の佐和に食わせる為でした。
なぜなら、登和に人魚の血を飲ませ、人生を狂わせたのは妹だったからです。
それも姉を救う為ではなく、人魚の生き血の効き目を確かめる為に……。
自分を実験台にした挙げ句、年をとらない身体にして人生を狂わせた……。
私が座敷牢で何十年も暮らしていた間、妹は外で結婚し子供を産み、普通に年老いていました。
許せない、妹に復讐を果たすまで死ねないと、それだけを念じて生きてきたのです。
「長生きしたい」と繰り返し言っていたのも、復讐するまでは、死んでも死にきれないという意味でした。
登和は人魚の肉を差し出し、佐和に食うように命じます。
しかし、不老不死になれる確率は天文学的。
成功すれば老いた姿で永遠に生き、失敗したら醜い化け物に成り果てる……どちらになるか、試せと。
迫られた佐和は心臓麻痺を起こし、その場で息絶えました。
復讐相手に死なれ、願いが叶わないことを知った登和は「ずるい人……」と泣き崩れます。
憑き物が落ちたような登和は、湧太達に自分と妹、そして人魚の死体を燃やしてくれと頼みます。
人魚に関わる物全てと共に、燃え盛る炎の中に消えた双子の姉妹。
結局、登和が見つめていたのは双子の妹だけだった、と呟く老医師。
彼は若い頃、登和の許嫁だったのです。
人魚のせいで人生を狂わされ、妹を恨み、復讐の為だけに生き続けた登和。
その人生はとても辛く、悲しいものです。
日本的なジメッとした「恨み、つらみ」を感じる、しみじみとしたお話でした。
巨大な剣で化け物を斬りまくる、ベルセルクとは違うタイプの復讐話です。
以上が復讐をテーマとしたアニメ2作品。
今後も随時追加していきますのでご期待ください。