「リストランテ・パラディーゾ」というアニメをご存知でしょうか。
オノ・ナツメさんの同名漫画が原作で、持ち味を残したまま、見事に映像化しています。
私はもともと原作ファンでしたが、アニメ版も大好き。
素敵な音楽と、あっさりした絵柄。
そして出てくるのが、枯れた素敵なおじさま達と居心地の良い空間、美味しそうなご飯なのです。
今回は、そんな本作の魅力をご紹介させて頂きます。
未見の方は、これをキッカケに興味を持って頂けると良いのですが。
ちなみに全11話、2009年に放送されました。
主題歌は「オレンジペコー」が担当し、とても合っていました。
DVDも発売しており、オーディオドラマにもなっています。
もちろん、原作漫画もオススメですよ。
「リストランテ・パラディーゾ」のあらすじ
オノ・ナツメ/太田出版・リスパラ製作委員会
アニメ「リストランテ・パラディーゾ」より引用
主人公のニコレッタは、イタリアに住む若い女の子。
彼女が祖父母と暮らす田舎から、ローマに来たのには訳がありました。
それはローマに住む母親と、その再婚相手に会うこと。
母親は「再婚相手が、子持ち女性は嫌だと言うから」という理由で娘を親に預け、今の夫と結婚したのです。
「母親は自分を捨てた」と恨むニコレッタは、義理の父親に会い、自分という娘の存在を暴露するつもりでした。
やって来たのは、母の再婚相手・ロレンツォがオーナーを務めるリストランテ。
人気店で、いつも予約でいっぱいです。
そしてなぜか、働いているのは素敵な老紳士ばかり……。
美味しいお料理、行き届いたサービス。
そして、対応してくれた老紳士・クラウディオの優しさ。
この店とクラウディオに惹かれたニコレッタは、自分の存在を暴露しない代わりに、店で働けるよう母のオルガに掛け合います。
こうして、「リストランテ・パラディーゾ」の見習いスタッフになったニコレッタ。
老眼鏡紳士限定の店なので、お客の前には出られませんが。
彼女の目から見た母とオーナー、店のスタッフ。
そして、お客との人間模様。
クラウディオに惹かれていくニコレッタの気持ちと絡めて、穏やかに鮮やかに、描かれていきます。
「リストランテ・パラディーゾ」の感想と魅力
主人公のニコレッタは、前述の通り行動力のある女の子。
オノ・ナツメ/太田出版・リスパラ製作委員会
アニメ「リストランテ・パラディーゾ」より引用
母親へ複雑な気持ちはあっても、真っ直ぐ素直な気性の持ち主です。
短い赤毛に、クリッとした目。
金髪碧眼の母親とはあまり似ていないので、母子だとバレずに済んでいます。
そしてキッチンスタッフとして働き始めた彼女は、クラウディオにどんどん惹かれていきます。
父親どころか、祖父のような年のクラウディオ。
オノ・ナツメ/太田出版・リスパラ製作委員会
アニメ「リストランテ・パラディーゾ」より引用
しかしニコレッタはすぐ気持ちを打ち明け、あまつさえ、勢い余って押し倒したり……。
若い娘の真っ直ぐな好意に戸惑い、さりとて応える訳にもいかず、オタオタするクラウディオ。
そして、ニコレッタの母親のオルガ。
幼い娘を親に預けて再婚したり、娘の存在を夫に伏せていたり、一見酷い女性に見えます。
しかし彼女も、決して悪い人間ではありません。
家庭と弁護士の仕事を、いつも全力で頑張る彼女。
売れっ子弁護士で多忙な為、なかなか娘に会いに行けなかったのです。
明るく無邪気な性格で、夫や店のスタッフに大切にされています。
店に来る母親とスタッフとして接するうちに、ニコレッタのオルガへの印象は、少しずつ変わっていきます。
そしてオルガも娘を気にしながら、どう接して良いのか戸惑います。
手探りながら一緒にお茶をしたり、忙しい仕事の合間に、プレゼントを買いに行ったり……。
そして母と娘には「老眼鏡紳士と、美味しいモノが好き」という共通点が……。
二人を見守るロレンツォも、良い味を出しています。
リストランテのオーナーであり、オルガの夫であるロレンツォ。
オノ・ナツメ/太田出版・リスパラ製作委員会
アニメ「リストランテ・パラディーゾ」より引用
熊のような、髭面でガタイの良い男性です。
のんびり優しく、物腰穏やか。
そして、妻のオルガを大切にしています。
「子持ち女性は嫌」というポリシーには、彼自身の境遇が影響していて……。
しかし異父兄のジジを大切にする、優しい弟でもあります。
そして、ニコレッタに想いを寄せられるのがクラウディオ。
お店のカメリエーレ長、つまりホール責任者です。
穏やかで優しく、思いやりがあって、気配り上手。
枯れた色気に紳士的な物腰で、お客にもファンが多いです。
それゆえ、無自覚に周りの女性を魅了してしまう罪作りな面も……。
しかし、少し気弱で押しに弱い面もあります。
ニコレッタの告白に戸惑いながら、優しさ故に、強く拒絶することが出来ません。
また別れた妻・ガブリエラを、まだ思い切れない描写も。
はっきりしたニコレッタやガブリエラに比べると、些か頼りない印象の彼。
だからこそ女性達に、迫って困らせてみたいと思わせるのかもしれません。
そして、オーナー・ロレンツォの兄である、ソムリエのジジ。
オノ・ナツメ/太田出版・リスパラ製作委員会
アニメ「リストランテ・パラディーゾ」より引用
無口だけどどこか可愛いく、無表情ながら美味しそうに賄いを食べる姿に、キュンとします。
そして、意外と観察眼が鋭い彼。
時々核心を突く発言で、ニコレッタや視聴者をドキリとさせます。
仕事に対する姿勢も確かで、相手をよく観察して、その時の気分に合ったワインを選んでくれます。
仏頂面で気難しいのは、同じくカメリエーレのルチアーノ。
小言が多く一見取っ付きにくいですが、実は情に篤い人物です、
亡き妻を今も愛しており、娘や孫も大切にしています。
もちろん、店の仲間達も。
少し後退したオデコが、チャーミングです。
美味しい料理を生み出すのは、シェフのフリオ。
にこやかで気さく、彼の料理教室はご婦人方にいつも大人気。
しかし若い頃は、今と違いクールで、近寄り難い性格でした。
その間に何があったのか、想像を掻き立てられる人物です。
ちなみに、愛妻家。
ヴィートはスキンヘッドに逞しい体格の、陽気なスタッフです。
女性が大好きで社交的ですが、パートナーがいる時は絶対浮気しないという、固いポリシーの持ち主。
女子大学生の奥さんと出会ってからは、彼女と仲睦まじく暮らしています。
運動好きで、夫婦揃ってサイクリングしたりと、リアルも充実。
もう一人のシェフは、最年少男性スタッフのテオ。
ガッシリした体格で無口、男らしい人物。
しかし料理への姿勢は真摯で、見た目からは意外ですが、繊細で美しいドルチェを作り出します。
年若いだけに他のスタッフのような余裕はありませんが、その荒削りな部分こそ、がテオの魅力なのかも。
スタッフは皆、ニコレッタの働きぶりをさりげなく見守っています。
そこには、年経たからこそ出せる気配りや余裕、優しさが……。
孫を見守るお祖父さんのようでいて、不思議な魅力や色気も持っている。
私もこんなお店に行きたい、そして行き届いたサービスを受けて、美味しいお料理を食べたい!
そんな気分にさせられる、素敵な物語です。