「ハチミツとクローバー」。
原作漫画はもちろん、アニメ、実写映画、ドラマと、色々な媒体で大人気になった作品です。
中でもアニメ版は、原作の絵や雰囲気を見事に映像化して人気を博しました。
スピッツやスガシカオの主題歌もとても素敵。
今回はそんな「ハチクロ」の名言をご紹介します。
アニメ「ハチミツとクローバー」の名言
「ハチミツとクローバー」とは、美大に通う5人の若者を中心とした青春群像劇。
天才少女と、彼女に想いを寄せる青年達、またその友人達……。
恋、友情、夢、就職……。
甘酸っぱく、時にほろ苦い、可愛くも骨太な物語です。
可愛らしい絵と魅力的なキャラクター。
ついでに、美味しいご飯と動物がたくさん登場するのも魅力です。
花本先生の名言
(C)羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
アニメ「ハチミツとクローバー」より引用
主人公である学生達メインの物語ですが、彼らを見守る花本先生もまた、重要な人物。
近くから悩める若者を見つめる先生の言動は、自分が大人になった今だからこそ、深く刺さるものばかり。
まだ老成していない、けれど学生ほど若くもない……。
そんな花本先生の名言を、ぜひ視聴してみて欲しいです。
花本先生は、主人公達が通う美術大学「浜美」の卒業生にして、若き講師です。
専門は美術史。
フルネームは、「花本修司」(はなもと しゅうじ)。
見た目からして、年齢は三十代始め~半ばぐらいと思われます。
教授達の中では若年ですが、主人公達からすれば、職を持つ立派な大人。
天然パーマにタバコ、ネクタイがよく似合う、柔和な男性。
お茶目で気さくな人柄で、生徒たちにも親しまれています。
ちなみに、声の担当は藤原啓治さん。
そして、ヒロインの「花本はぐみ」ちゃんの親戚であり、保護者でもある彼。
幼い頃から彼女を娘のように可愛がり、多忙な父親に代わって学校行事にも参加していたほど。
彼女とは「修ちゃん」「「はぐ」と呼び合う仲です。
(C)羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
アニメ「ハチミツとクローバー」より引用
はぐちゃんを溺愛しており、彼女の幸せの為なら豹変、ものすごい「親バカ」ぶりを発揮します。
そんな彼ですが、亡き親友・原田と、その未亡人である理花さんについては、今でも深い傷を抱えています。
大切な原田さんを失った傷と、同じ苦しみを持つが故に、理花さんと距離を置かねばならない哀しさ……。
大人でありながら、どこかでまだ青春を引き摺っている、そんな人物です。
先生の亡き親友・原田さんと、その妻である理花さん。
三人は学生時代から仲良しでつるんできた、かけがえの無い者同士です。
しかし、やがて原田さんと理花さんは夫婦になり、「二人と一人」に。
彼らを祝福しながらも、どこか切ない感情を持つ先生。
そして主人公の一人・竹本くんと同様、花本先生も天才ではない、普通側の人間です。
竹本くんにとってのはぐちゃんや森田さんと同じように、花本先生にとって原田さんと理花さんは、自分とは違う「特別な天才」。
学生時代から美術史、色彩学などでは優秀な成績を修めていたものの、芸術家としてはとうてい二人には敵わない……。
そんな現実を噛みしめてきた、花本先生。
教師となった今も、どこかにコンプレックスを抱えている……そんな「普通の人」側だからこそ、視聴者にとって感情移入しやすいのかも知れません。
学生の若者たちからすれば、花本先生はずっと年上の、立派な大人。
でも、先生自身の認識はそうでもありません。
恋に進路に悩む、教え子の山田さん(美女)……彼女の愚痴を受け止めながらも、内心で彼は呟きます。
「子供が子供なのは 大人がなんでも分かってるって思ってるところだ。
大人になったところで何が変わるよ?せいぜい階段で息が切れたり 腰が痛くなったりする程度だ」
「ずっと帰りたいけど どこに帰れば良いのか分からない」
「原田 俺は寂しいよ」
年を重ねただけで、中身は昔とそう変わらない……。
大人だって、何でも知ってる訳じゃないし、悩んだり迷ったりしている。
自分が大人になった今、この言葉には深く頷けます。
子供の頃思っていたほど、大人って完璧な存在じゃないんですよね……。
一歩退いた場所から見ているせいか、恋に悩む生徒達の感情を、的確に見抜いている先生。
もっとも、それをいちいち指摘しないのが、彼のデリカシーあるところですが。
花本先生が溺愛する、はぐちゃん……彼女が先輩の森田さんに、恋心を抱き始めた頃。
本人が無自覚な気持ちを、先生はちゃんと見抜いていました。
森田さんと二人で画材の買い出しに出かけたはぐちゃんを、出迎えた先生。
「楽しかったかい?」と質問すると、はぐちゃんは涙ぐんで、しょんぼりします。
後にその時のことを、竹本くん(はぐちゃんに恋心)に少し寂しそうな笑みで静かに語る先生。
「あの日帰って来て俺に言うんだ、しょんぼりして。
ちっとも楽しくなかった、ずっと早く帰りたかった、トイレにも行きたいって言えなくて。
目の前だと、飯も食えなかったって。
……バカだなそんなの、好きだからに決まってるじゃないか」
年の割に色恋に疎く、お子様なはぐちゃん。
彼女にとって誰かに恋心を抱くのは初めての経験で、だから彼女は自分の気持ちが何なのか、分かりませんでした。
でも、先生には分かったのです。
恐らく、自分の経験から……。
はぐちゃんが自分の前で寛いでくれるのは、安心出来る相手だから。
それは嬉しいことだけど、同時に少し寂しいことでもあります。
教え子の山田さんや真山くんなど、皆の内面をさりげなく見抜き、時に手助けする先生。
お節介にならないよう、さりげなく……そんなところがまた、苦労人の先生らしいんですよね。
やがて先生は子供の頃から知っており、娘のように想っていたはぐちゃんに対して、異性としての愛情を抱き始めます。
それは、彼自身にも意外なことだったようで……。
しかし、その気持ちを口に出したり、押し付けたりはしません。
あくまでサポート役に徹し、彼女が思うように生きられるよう、全力で支えます。
彼女が利き手に怪我を負った時は、リハビリに全力で取り組むために休職願いを出したほど。
そのことを、恩師の丹下教授は喜びます。
卒業出来ず学校に留まっていたような花本先生が、ようやく自分の道を見つけてくれたと……。
異性として選ばれなくてもいい。
はぐちゃんの助けになれれば……。
常に相手に選ばせようとする先生の姿勢は、やっぱり大人だと感じます。
はぐちゃんより、かなり年上なこともあるでしょうけれど……。
最後、ネタバレになりますが。
はぐちゃんは、恋より「描くため」の人生を選び、花本先生に傍で支えて欲しいと告げます。
恋ではないけれど、パートナーとして彼女に選ばれた花本先生。
「返さなくていい。(俺の人生を)全部やるよ」
喜びに溢れた、先生の一言です。
また彼女と相思相愛でありながら、それぞれの道を選んだ森田さんに対して「(借りた)金は返すが、はぐは返さんっ」と宣言。
その言葉を教え子や教師陣に聞かれ、「青春様じゃ!!!青春様が帰ってきたぞお!!」と、勝手に祝われてしまいます。
どんな時も腐らず、自分の思う道を実直に歩んで来た先生。
このラストは、先生だからこそ訪れたご褒美だったのでしょう。
はぐちゃんのリハビリは大変だし、二人とも挫けることがあるかもしれません
でもきっと、はぐちゃんの傍に花本先生が居れば乗り越えられる気がします。
続いて山田あゆみさんに想いを寄せる大人の男性・野宮匠(のみや たくみ)さんの名言をご紹介します。
野宮匠の名言
カッコいい大人でありながら、だんだん青い部分を見せるようになる、野宮さん。
大人と若者の間で悩む、彼の発言の数々を噛み締めて下さい。
(C)羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
アニメ「ハチミツとクローバー」より引用
野宮さんとはハチミツとクローバー(以下ハチクロ)に登場するヒロイン②、山田あゆみさんの関係者です。
また主要人物であり、山田さんに想いを寄せられる真山巧(まやま たくみ)くんの、会社の先輩でもあります。
こうして書いても、既にややこしい人間関係……。
山田さんは、同級生の真山くんに片想い。
真山くんは、大人の理花さんに片想い。
そして野宮さんは、山田さんに片想い……。
(C)羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
アニメ「ハチミツとクローバー」より引用
しかも野宮さんは建築事務所に務めており、理花さんとは仕事の上で、交流があります。
相関図があれば、分かりやすいのですが。
野宮さんは、推定30代前半。
社会人になりたての真山くんにとっては、仕事が出来る頼もしい大人の男性です。
実際有能で、藤原建築事務所では主戦力の一人。
コミュニケーション能力は高いし、手先も器用。
おまけになかなかの男前で、眼鏡に長めの髪、煙草が似合います。
実際モテモテで、過去に争奪戦が起きたこともあったのだとか。
他人に深入りせず、すいすいと人間関係を泳ぐ姿は、まだ青い真山くんには真似出来ません。
しかしそんな真山さんが、後輩に想いを寄せる女の子に惹かれ始め、少しずつ変わっていくのです。
彼を変えたのが、前述の山田あゆみさんです。
(C)羽海野チカ/集英社・ハチクロ製作委員会
アニメ「ハチミツとクローバー」より引用
鋭い野宮さんは、会ったばかりの山田さんが後輩の真山くんに片想いしていることをすぐに見抜きました(まあ、バレバレなんですが)。
最初は軽い気持ちで、ちょっと彼女をからかってみるつもりだったのかもしれません。
真山くんが忘れた上着を、こっそり羽織る山田さんを素知らぬ顔で誘い、蕎麦を食べに行ったり。
また真山くんが事務所を辞め、想いを寄せる理花さんの助っ人にかけつけたことを、わざわざ山田さんに告げたり。(山田さんはショックを受けて、放心してしまいました)。
しかし、引き返せなくなったのはきっと、お花見の日です。
真山くんに嫉妬させようと、野宮さんの車に乗った山田さん。
我に返り降りようとしますが、「関係無い?真山の気を引こうと、俺をダシにしておいて。酷いことを言うなあ」
山田さんのズルさ勝手さを、淡々と指摘する野宮さん。
さらには、「バレちゃってる片想いって、不毛だけど楽だもんね。罪悪感で相手は優しいし。もうこれ以上傷つくこともない」と、山田さんの心の奥、触れて欲しくない点をズケズケと突きます。
薄々気付いていたけど、直視したくなかった自分のズルさ。
そして、恋に望みが無いこと……。
やめて下さいと、助手席の山田さんは号泣。
そのまま車を走らせ、たどり着いたのは観覧車が見えるホテル。
閉店間際のお店でケーキと飲み物を買い、部屋にチェックイン。
ベランダの椅子から、夜の観覧車を眺めます。
ここに連れて来たのは、野宮さんにとって特別な場所だから。
業界に入ったばかりの頃、手掛けた建築物の一つだったのです。
観覧車を見ながら、毎日必死で作業した、思い出の場所。
それから煮詰まると、時々一人で来る、秘密のスポット。
私的な思い出のある場所に連れて来たのは、それだけ山田さんへ特別な興味が芽生えている証なのかもしれません。
また、らしくもなく虐めてしまった、お詫び心もあるのかも。
真山くんを見つめる山田さんに、無意識で苛ついていたのかも?
反省したのか、山田さんがポツポツ話すのを、静かに聴く野宮さん。
「好きなら幸せを祈れるハズなのに……私はずっと、壊れちゃえって……」
「うん……」
可愛い顔をグシャグシャにして泣く、年下の女の子。
その様子に、我知らず魅せられてしまったのか。
翌朝気付いた時、二人はそれぞれのベッドに眠っていました。
「昨夜は、色々と凄いモノを見せてもらったね」と笑う野宮さん。
あれから山田さんはヤケクソでケーキを全部食べ、ビールを飲みまくり、酔いつぶれて野宮さんに介抱されたのでした。
「わ、私、凄いご迷惑を……!」狼狽する山田さんに対し、なんだか楽しそうな野宮さん。
「朝ご飯食べて、観覧車乗ろうか」
この時から山田さんは、野宮さんにとって「後輩に惚れている女の子」以上の存在になったのでした。
また山田さんも、心情を吐露したこと、とんでもない迷惑をかけたことで、野宮さんに対して不思議な親しみを感じます。
しかしその後、野宮さんは仕事の為に半年間の鳥取生活へ。
なかなか会えなくなり、山田さんへの心配を募らせます。
何せ彼女は抜けている面があり、傷心につけ込む男がいないとも限りません。(腕っぷしは強いですが……)
不器用な恋心に、危なっかしい真っ直ぐさ。
陶芸に対する、真剣な姿勢。
大人の野宮さんから見ると、山田さんはまだまだ子供です。
だから心配だし、放っておけない。
さりとて、傷つけるのが嫌だから、手も出せない。
そう告げた彼に、友人の山崎さんはさらりと訊きます。
(C)羽海野チカ/集英社
漫画「ハチミツとクローバー」より引用
「なんでお前の恋愛って、傷つけることが前提なの?」
「俺は好きな子が出来たら、うんと大事にしようって思ってたぜ?」
その言葉に、目から鱗な野宮さん。
「山崎……お前、凄いよ……」
同感です。
そして先輩から、山田さんが恋敵である理花さんと仕事をしていると聴き、「バカだなあ、君は」と密かに嘆息します。
それは事務所の中で、理花さんと真山くんと、三人で過ごすということ。
理花さんを見つめる真山くんを、至近距離で見るということに他なりません。
実際山田さんは、理花さんを心配する真山くんに、何度も胸を痛めます。
心配になった野宮さんは山田さんに電話をしますが、彼女は明るい声。
しかし野宮さんは、電話の声から無理していると見抜きました。
「全く、信じられない……鳥取から東京まで、車で9時間かかるんだぞ!?」
そう言いながら車のキーを掴み、ガソリンを満タンにして、東京へと向かいます。
今すぐ、山田さんの許へ行きたい……らしくなく、衝動で行動する野宮さん。
しかし運悪く山田さんはお使いで、入れ替わりで鳥取へ……!
ガッカリしながら、すぐ鳥取へUターンする野宮さん。
疲れてボサボサ頭で。
そんな珍しい姿に、「男ぶりが上がったわね」と微笑む、上司の美和子さん。
やっとの思いで鳥取へ帰ると、そこには山崎さんが引き留めていた山田さんの姿が……!
挨拶する彼女に「帰らないで。起きたら話すから、ここにいて」と、山田さんの手を握って倒れる野宮さん。
そのまま爆睡。
狼狽する山田さんに、すかさず山崎さんがお布団を用意し、笑顔で退場。
山崎さん、友人の為によく頑張りましたね。
翌朝目覚めた野宮さんは、山田さんに朝食をご馳走し、鳥取砂丘へと案内します。
「どうして東京に?」と訊かれ「君に会いに行ったんだよ」と答えますが、冗談だと思われてしまう野宮さん。
不憫です……。
帰り際、駅のホームで山田さんを見送る野宮さん。
きっともうすぐ、彼女の恋は終わる。
その時現れて、傷心の彼女に優しくすれば、労せず落とせる。
頭ではそう分かっていても、野宮さんの気持ちはモヤモヤ……。
電車の発車間際、思わず口を突いて出た言葉は「山田さん。どうしようもなくなったら、俺を呼びな」というもの。
どうして?と問い返され、「なんでって……君が好きだからだよ」と、素で答えてしまいます。
その瞬間扉が閉まり、動き出す電車。
我に返った野宮さんは「って俺……なにぶっちゃけちゃってるの……?」と、狼狽。
いつでもカッコよく、スマートにが信条だったハズなのに……。
そして言われた山田さんも、電車の中でパニック状態。
その後鳥取から帰った野宮さんに、山田さんは複雑な気持ちを抱きます。
野宮さんが帰って来てくれて、とても嬉しい。
でもそれは、長年好きだった真山くんへの片想いを、否定することにも思えて・・・そんな彼女を、辛抱強く待つ野宮さん。
個人的にとても好きなのは、最終回の二人の会話。
いつまでも真山くんへの想いを引き摺る自分に罪悪感を覚える山田さんに、野宮さんは告げます。
「ここまできたら正直にいこう?俺はあんたが好きだ。かといって、何もかもをガマンするのは無理」
「一緒にいよう。ケンカしてもいいじゃない、ちゃんと話をしよう?全部はそれからだ」
もう少し時間がかかりそうな、山田さん。
気持ちはそんな簡単に、切り替えられるものではありません。
でもきっと、野宮さんが傍にいてくれれば大丈夫。
そんな風に思える、素敵な最終回でした。
カッコ良さと青さを両方持つ男性、野宮さん……。
個人的に、とても好きなキャラクターの一人です。