「厨二病」という病気は皆様ご存知かとは思いますが、その起源については諸説あります。

そもそも「中二病」自体は伊集院光氏のラジオでの発言がきっかけ(要するに、中学2年生ぐらいになると自己承認欲求が暴走するという話)ですが、現在の「厨二」の場合はもう少し違うイメージ。

例えば、名作RPGである「ファイナルファンタジー」シリーズ(特に7辺り)とか、名作ライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズとか。

勿論、「ソード・アート・オンライン」のキリトも。

闇とか、特殊能力とか、そういうのを実際に持っている或いは感じるとか、そういった事を拗らせた人達を指します。

これも自己承認欲求のある種暴走ですが、ファンタジックな妄想も加わっています。

 

 

さて、そんな拗れたファンタジックな妄想と自己承認欲求は様々な2000年代のオタクコンテンツと非常に相性が良く、ラノベ・漫画・アニメの大きな推進力となっているのは言うまでもありません。

コケにするように書いていますが、筆者もそんな厨二病患者の一人です。

 

要するに、2000年代アニメの血統は厨二病からは逃れられない運命(さだめ)なのです!(バ~ンとか効果音を入れたいですね)

 

2000年代アニメの厨二病的象徴「涼宮ハルヒ」


(c)2006 谷川 流・いとうのいぢ/SOS団 (c)2007,2008,2009 谷川 流・いとうのいぢ/SOS団
アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」より引用

 

まずは「涼宮ハルヒ」シリーズについてです。

このハルヒも恐らく影響を受けたであろう作品群は90年代に遡ります。

 

アニメで言うと、「エヴァンゲリオン」、漫画では「ハンター×ハンター」や現在再アニメ化で話題のフジリュー先生の「封神演技」、ライトノベルだと「ブギーポップシリーズ」等でしょうか。

最先端の物理学でも考察される時間や宇宙、パラレルワールド等に関する描写や、心理学や精神医学などの概念・用語が散りばめられているのが特徴。

 

それから、特殊能力です。

これは魔法や単純な超能力とは少し違って、もっとキャラクターに合わせた特長や個性が混じった物です。

「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズのスタンド能力や、ワンピースに於ける悪魔の実、或いはそれに類似するものですね。

異能なんて言い方も、この辺からではないでしょうか。

 

「涼宮ハルヒ」シリーズは現代の厨二設定の原点でありながら、且つ商業的に大きな成功を収めた作品でもあります。

 

 

Fateシリーズ

奈須きのこ / TYPE-MOON・ ufotable・アニプレックス、ノーツ
アニメ「Fate/Zero」より引用

 

更に、Fateシリーズ。

元々は18禁ゲームの作品ですが、非常に文学的且つ、現代社会に伝説上の人物をサーバントとして呼び寄せ聖杯を賭けて競い合うという正しく厨二です。

この作品は「現代の魔法使い」というコンセプトが厨二の大好物として受け容れられました。

 

しかし面白いのは、魔法使いは杖を捨て、人によっては銃に持ち替えたというのに、騎士(或いは騎士的な技能を持つ人間)は剣を捨てていない点。

剣と魔法ではなく、剣と銃と魔法の世界観というのが、現代のファンタジー観なのでしょうか。

この辺で、現代の厨二観の基礎が完成したのかもしれません。

 

 

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魔法少女まどか☆マギカ


© Magica Quartet/Aniplex・Madoka Partners・MBS
アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」より引用

 

次のターニングポイントとして、厨二ではありませんが「魔法少女まどかマギカ」を挙げたいと思います。

可愛い見た目のわりには残酷な展開や描写が容赦なく降りかかる事ばかりが話題となりますが、この作品をきっかけに「宇宙の法則」や「タイムリープ」、或いはそれに関連するような設定や世界観と、古典的な厨二コンテンツの「魔法」が結びつく事が増えました。

 

また、主人公たちの武器がコスチュームと「魔法少女」という設定の割にはえらく近現代的なものが出てくるというのも大きなポイントでしょう。

魔法使いが杖を使う時代が終わったのです。

 

 

ソードアート・オンライン


(C)川原 礫/アスキー・メディアワークス/SAO Project
アニメ「ソードアートオンライン」より引用

 

そして、現在の「厨二病」に於ける最大のターニングポイントは何と言っても「ソード・アート・オンライン」シリーズ。

最近ではイキリトなんて言葉も流行っていますね。

 

SAOの秀逸なところは、「VRゲーム」である事によって現実世界で実現する可能性を匂わせている所。

また、本作はタイトル通り剣が主軸ですが、厨二ならではの銃や魔法なんかの併用もありますし、そもそもスキルシステムは異能の1つと考えても良いかもしれません。

2018年にはスピンオフとして「ガンゲイル・オンライン」が放送されていますが、銃のみのハードな世界観が本編と良い塩梅に対照的なのが面白い所です。

 

最近のアニメに出る厨二病的な作品や、設定・世界観を持つ物は更に発展と多様化を進めました。

先ほど言ったように、魔法使いが杖を銃に持ち替えたり、剣士の持つ剣も刃の形が多様化したり、異能や魔法はアプリ感覚で気軽に扱える物が増えてきたような感じです。

携帯電話がガラケーからスマホへと変化していったように、厨二もスマート化したという感じではないでしょうか。

 

もう暫らくはポストSAO作品群によるスマート厨二病が主流となるでしょうが、個人的な意見としては、今後は少し90年代末寄りの方向に向かう気がしています。

「Caligula -カリギュラ-」のような、「ハルヒ」や「ブギーポップ」の路線に近い世界観の作品も人気が高いですし、「ブギーポップ」も(ちゃんとしてくれるかはわかりませんが)アニメ化によるリバイバルブームが充分考えられます。

 

今後の厨二病がどんな方向へ向かうのか、アニメコンテンツがどのように発展していくのか、そして数奇な運命に導かれた厨二の承認欲求の未来は何処へと向かうのでしょうか。

答えは、「神のみぞ知る」。