見ると、無性に遠くに行きたくなるアニメ。
それは内容がロードムービー的だったり、はたまた、知らない場所を舞台にした物語だったり……。
今回はそんな、「見ると旅に出たくなるアニメ」をご紹介させて頂きます。
見ると、どこか遠くに行きたくなってしまうかもしれません。
旅に出たくなるアニメまとめ
銀河鉄道999
(C)松本零士・東映アニメーション
アニメ「銀河鉄道999」より引用
まずオススメしたいのが、有名な「銀河鉄道999」です。
かなり前の作品ですが、「汽車は闇を抜けて、光の海へ~♪」という主題歌とセットで思い出す、本作。
リアルタイムではなく、再放送で視聴しました。
鉄郎少年が謎の美女メーテルと共に、宇宙を走る汽車で旅をする、壮大な物語です。
あらすじ
西暦2221年の未来。
裕福な者は機械の身体を手に入れ、貧しい者達は生身の身体のまま、虐げられる生活を強いられていました。
主人公の鉄郎も貧しく、普通の生身の身体です。
機械の身体を手に入れたいと夢見ていましたが、ある日「機械伯爵」の人間狩りに遭い、母親を殺されてしまいます。
嘆く鉄郎は母の復讐を遂げ、必ず機械の身体になることを決意します。
謎の美女メーテルに、無料で機械の身体を与えられる星の存在を教えられた鉄郎。
メーテルに貰った無料パスポートで、汽車に乗り込みました。
目的の星を目指して旅をしながら、行く先々で様々な人に出会い、鉄郎は「機械になることは、本当に幸せなのか」と考えるようになります。
ハーロックやエメラルダスなど、松本作品のキャラクターがゲストとして登場することもあり、またメーテルの目的や正体などの謎もあるので、色々な面で楽しめます。
(C)松本零士・東映アニメーション
アニメ「銀河鉄道999」より引用
銀河鉄道の車掌さんも可愛いし、チンチクリンな鉄郎と、すらりとしたメーテルの対比は微笑ましいコンビ。
少年を年上の美女が導くという、今思うと「おねショタ」の走りだったのかも?
ちなみに車掌さんの声は、今は亡き肝付兼太さんです。
懐かしい~(涙目)。
それにしても初めて見た時、鉄郎のお母さんが殺されてしまった場面はショックでした。
当時はまだ、子供でしたし……。
しかも原作では剥製にされ、壁に飾られてしまうんですよね……。
人間の剥製……おかげで、今も壁から突き出るタイプの剥製を見ると、例の場面を思い出します。
機械伯爵、おっかない……。
そして何と言っても印象的なのは、美女・メーテルの存在。
長いまつ毛に憂いのある眼差し、カールした金髪。
全身を覆う、黒い毛皮の服と帽子。
謎めいた目的といい、「キレイなお姉さん」の元祖と言えるメーテル。
彼女の存在なくして、本作は語れません。
なぜ、縁もゆかりもない鉄郎を旅に連れ出したのか?
そして、機械化母星の女王プロメシュームと、メーテルの関係は?
なぜ機械帝国の女王は、機械至上主義になったのか。
メーテルの父親は、なぜ小さなペンダントにされてしまったのか。
背景が気になり、つい続きを見てしまう作品です。
そして幸せについて、改めて考えさせられます。
蟲師
漆原友紀/講談社・「蟲師」製作委員会
アニメ「蟲師」より引用
旅と言えば思い出す作品に、もう一つ「蟲師」があります。
明治の始め頃を思わせる、古い日本に似た世界。
主人公の青年ギンコは、不思議な存在「蟲」に関わる蟲師。
蟲とは姿も効果も異なる、人間の傍に在るモノ。
それは時に災いになり、またある時は救いにもなり。
どちらによ、人には制御が難しい存在です。
あらすじ
ギンコは幼い時の体験から蟲を引き寄せてしまう体質なので、一ヶ所に滞在することが出来ません。
常に旅をしながら、行く先々で蟲と、それに関わる人間達の世話をしています。
行き先は山だったり、海だったり。
ギンコが出会う人は、特定の記憶だけを失っていたり、必ず当たる予知夢を見たり、奇妙な虹を探す旅をしていたり……。
いずれも、その根っ子には蟲の存在が隠れています。
蟲に関わった為に、人生が変わってしまった人々。
楽しい話もあれば、悲しく救いの無い、後味の悪い話もあります。
かくいうギンコ自身も、蟲と出会い人生が変わった一人。
子供の頃はごく普通の黒い髪で、ヨキという名前だったギンコ。
しかし行商の途中で母親を失ったヨキは、女蟲師の「ぬい」に保護されます。
その時、初めて蟲と関わったヨキ。
やがてぬいと蟲に馴染み始めますが、ある蟲の存在が、ヨキとぬいの人生を大きく変えていきます。
なぜヨキはごく普通の容姿から、今の白髪緑目になったのか。
なぜ左目と記憶を失い、「ギンコ」と名乗るようになったのか。
切なく、印象的な過去エピソードです。
そして対象的に、旅に出られない為、ギンコの訪れを心待ちにしている人物がいます。
それはギンコの旧知の女性・淡幽。
彼女は身体の内に生まれつき蟲を封じており、そのせいで片脚を自由に動かすことが出来ません。
来る日も来る日も、自分の中に在る蟲を文字で記し、延々と封印する毎日。
そんな彼女にとって、ギンコがもたらす外の話は、何にも替え難い貴重なモノ。
共に蟲から離れられない身でありながら、正反対の人生を送るギンコと淡幽。
二人の、不思議な交流は一服の癒しです。
退治ではなく、蟲と共生したいと願う点も共通していますし。
物語シリーズ
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
アニメ「化物語」より引用
「化物語」を始めとする、物語シリーズ。
その重要なキーパーソン「忍野(おしの)メメ」は、文句ナシの風来坊キャラクターです。
何せどこからともなく現れ、いつの間にか居なくなる。
謎多き人物なのですから……。
彼が主人公・阿良々木暦(あららぎこよみ)くんの住む街にやって来た時、奇しくも暦くんは三人の吸血鬼ハンターによって、退治される直前でした。
吸血鬼になりたての暦くんは、熟練のハンター達の前では手も足も出ません。
そんな一瞬に飛び込み、三人の攻撃を止めてみせたのが、忍野さんです。
これには助けられた暦くんも、邪魔された三人もビックリ。
何せ現れたのは、ボサボサの金髪にピンク色のアロハシャツ。
ハーフパンツに脛毛丸出しの足、サンダル履きの中年男性でしたから。
その上アゴ髭、クロス型のピアスにネックレス。
どう見ても怪しく、「正義の味方」には見えません。
第一声も「はっはー。随分と元気だね、何か良いことでもあったのかい?」という、自分の神業を感じさせない軽いもの。
結局忍野さんはハンター達を退け、戸惑う暦くんの状態を説明します。
胡散臭い彼は、不思議な存在「怪異」(かいい)との橋渡しをする、エキスパートだったのです。
本人曰く「専門家」とのこと。
忍野さんは人間から吸血鬼になり、命を狙われる暦くんに、道を示します。
ハンター達と交渉し、一人ずつ戦うよう約束を取り付け……。
暦くんと、彼を吸血鬼にした「キスショット」にとって、頼もしい味方に見える忍野さん。
ただし、相応の対価(500万円)と引き換えですが……。
しかし忍野さんは、誰かに肩入れせず、頑なに「中立」であろうとします。
それが、専門家としての矜持なのでしょう。
また「僕は助けない。君が勝手に助かるだけさ」と、何度も繰り返します。
端から見ると、明らかに忍野さんの助けあってこそなのですが……。
それもまた、譲れないスタンスなのでしょう。
忍野さんは暫く街に留まり、暦くんや、怪異に巻き込まれた少女達を手助けします。
いい加減に見えて、忍野さんの知識や実力は本物。
例え元学習塾の廃屋に住み着く、ホームレス状態であっても……。
そんな忍野さんですが、ある事件の最中に突然姿を消します。
「もう自分がいなくても、皆は自力で解決出来るだろう」という確信があったから……。
しかも姿を消す直前に、「いくら僕だって、挨拶もせずにいなくなったりしないよ」という言葉を残して。
後で振り返った暦くんは、その言葉を「人との別れが苦手な忍野なりの、別れの挨拶だったのだ」と気付きました。
それから長い間登場せず、それでいて、名前は頻繁に出て来た忍野さん。
様々な人物が「忍野は今、どこにいる?」と気にかけ、訝しく思っていました。
そんな忍野さん。
最終作「終物語」(おわりものがたり)で、久々に登場しました。
それもほんの短い時間で、あっという間に去って行く……。
やっぱり彼は、風のようにいなくなる風来坊キャラクターなのだと感じました。
楽しいムーミン一家
トーベ・ヤンソン、ラルス・ヤンソン/テレビ東京、テレスクリーン
アニメ「楽しいムーミン一家」より引用
人気アニメ「楽しいムーミン一家」からは、自由を愛する青年・スナフキンをご紹介します。
彼は人間に見えますが、実は「ムムリク」という妖精の一種なのだとか。
初めて知った時には、驚きました。
黄緑色のコートに、同じ色の帽子。
そして黄色いスカーフ、茶色の髪。
見た目は、人間の青年にしか見えません。
ちなみに、登場人物の一人「ミイ」の親戚です。
ちなみにスウェーデンでは、本当は「スヌスムムリク」という名前で呼ばれているとのこと。
日本では呼び難い為、スナフキンという名前の表記になったそうで……。
ちなみにムーミンの原作は、トーヴェ・ヤンソンさんの小説です。
アニメの「楽しいムーミン一家」は、「ムーミントロール」というカバに似た妖精達の暮らす、ムーミン谷が舞台です。
主人公のムーミン少年を始め、ムーミンママやムーミンパパ、ガールフレンドのフローレンス。
友人のスニフや、不思議な生物ニョロニョロ。
そして、ムーミンの親友であるスナフキンの、楽しい毎日を描いています。
ムーミン達は冒険をしたり、ジャムを作ったり、お客さんを迎えたり。
毎日楽しく暮らしています。
そんな中で、一風変わったタイプのスナフキン。
知的で穏やかだけど、基本的に自由と孤独を愛する人物です。
ムーミントロールは、冬の間は家に籠り、冬眠します。
その間スナフキンは冬眠せず、南の方角へ旅に出る……。
そして春の訪れと共に、ムーミン谷に帰還するのです。
ムーミンにとって、冬は親友のスナフキンと離れ離れになる季節。
そして春は、またスナフキンと会える嬉しい季節。
スナフキンも、自分の帰りを待ってくれる親友がいて、帰る場所があるからこそ、安心して旅に出られるのかもしれませんね。
しかし焚き火の前に座り、一人でハーモニカを吹くスナフキンの姿は、強く印象に残っています。
しかも声の担当は、あの子安武人さん(歴代で何人かの人が担当してきましたが)。
声も甘く優しく落ち着きがあり、ちょっと素敵なのです。
ちなみに、主人公の父・ムーミンパパの声は、大塚明夫さん。
カバのような可愛い外見とは裏腹な、驚きのダンディボイスです。
ひとつの所に定住せず、旅が日常の「風来坊」キャラクター。
それが忍野メメとスナフキン。
いわゆる「フーテンの寅さん」タイプですね。
私自身は、同じ場所に定住する安定が好きだけれど、時々ふと風来坊の自由さに憧れてしまう……まあ、実際にそんな生活が出来るかは、さておき。
宇宙を旅する999と異なり、人の足で、村や町を旅する蟲師。
スケールは全然違いますが、人生や幸せについて考えさせられるのは、共通しています。
結局、人の営みがある場所には、物語が生まれるということなのでしょう。