ファーストガンダムが今でも人気である不思議
ガンダムというアニメ。
このアニメは言うまでもありませんが、アニメの歴史の中でもトップクラスで有名。
シリーズ化されて続編も作られ、派生作品も現在になっても作られています。
しかし、いくつもの続編や派生作品が作られていますが、1作目のガンダムが今でも一番面白いと言われています。
1作目のガンダムは「ファーストガンダム」と呼ばれていますが、なぜその1作目が現在も支持されているのでしょうか?
ファーストガンダムからの続編や派生作品の中には、ヒットした作品も多いのに不思議な話。
そこで、ファーストガンダムが今でも支持されている理由を、僕なりに考えていきます。
「ガンダム」について語り始めると止まりませんが、まずはシリーズ一作目の「機動戦士ガンダム」通称ファーストガンダムとの出会いについてお話したいと思います。
今でこそ夕方のテレビ番組は、どの局もニュースや奥様向け地元情報番組がほとんどになってしまいました。
しかし、昔はテレビアニメの再放送が何度もあって、見逃したものや見ていなかったものなどを改めて見て楽しむことができていました。
「ガンダム」についても同様。
登場人物たちの関係や時間の経過など、途中からではわかりにくいことがらについて、繰り返して見ることでストーリーの流れやキャラクターの動きをしっかりと理解して覚えることができたのです。
今ではかなりのガンダム好きで、キャラクターの名ゼリフやモビルスーツなどの知識については人一倍持っているつもりですが、それでも最初に見始めた頃は、それまでの単純明快なアニメとはちがっていたのでついていくのが大変でした。
ここではそんなシリーズ一作目を初めて見たときの体験を綴っていきたいと思います。
目次
シリーズ一作目ファーストガンダムとの出会い
矢立肇・富野喜幸/日本サンライズ
アニメ「機動戦士ガンダム」より引用
ファーストガンダムは全43話で成り立っています。
ですが放送の第1話からリアルタイムで欠かさず見ることができた幸運な人はわずかでしょう。
劇場版ができる前、ビデオ販売が始まる前に限れば、途中から見始めた人のほうが圧倒的に多いのではないかと思います。
今では万人から高い評価を受けて支持されているガンダムですが、途中から見始めてどんな印象を受けたかは千差万別だったはず。
実際、友人は全然面白くなかったと言っていました。
なぜならその頃のアニメ・・・特に男の子向けは勧善懲悪ものがほとんど。
平和な町を破壊する敵ロボットがやってきて地球防衛軍では歯が立たず、正義のロボットが出動。
○○ビーム!なんて必殺技でやっつけて一話がおしまい。
そんなプロットばかりでした。
確かガンダムの時間帯もそんなヒーローロボットアニメの枠だったと思います。
そんな中で始まったガンダム。
まず左右対称ではないそのスタイルに違和感を覚えました。
右手にビームライフル、左手にシールドのおなじみの格好。
でも昔のロボットは左右対称のものがほとんどでした。
それに加えてガンダムは必殺技がない。
○○ビームや××ミサイル、って叫んで発射しません。
子供にはおもしろく無いというのも納得・・・。
ストーリーもかなり難しい部分があります。
同じ敵ロボットがずっと出てくるし、戦いがほとんどない回もありました。
主人公も暗い少年だし、これまでのアニメと一線を画していました。
あの当時、宇宙戦艦ヤマトもすでに放送されていたけれど、これと同じようにもう少し年齢の高い子供向けのアニメのように感じました。
実際・・・途中で短縮、打ち切られました。
それほど少年が戦争にかり出されるアニメというのはセンセーショナルであり、他にはない類いのものだったから。
僕が最初にファーストガンダムのひとつの話を最初からきちんと見たのは、第32話「強行突破作戦」。
「ガンダム」が最初に放送されたリアルタイムの頃は学生のころでした。
学校から家までが遠かったので帰宅してテレビをつけて見ても番組が半分以上過ぎていました。
ひとつの話を最初からは見られなかったのです。
ですので登場人物の会話や戦闘など、運よく見られた部分を繋げながら頭の中で補足し、かろうじてストーリーのアウトラインを紡いでいました。
その日・・・つまり32話放送当日はたまたま早く帰り着くことができたので最初からじっくりと見ることができたのです。
それは劇場版からはカットされたエピソード。
すでに記憶はあやふやですが、思い出してみます。
ファーストガンダム32話「強行突破作戦」
矢立肇・富野喜幸/日本サンライズ
アニメ「機動戦士ガンダム」より引用
ジオン側の描写から。
功をあせったデミトリーはテスト途中で廃棄される予定だったモビルアーマーのザクレロに乗って、上司であるシャアの許可を得ないまま出撃します。
ホワイトベースに接近してきたザクレロに対してガンタンクが出撃するのですが苦戦。
アムロは下半身をロケット状のパーツに付け替えたガンダムで出撃して対決します。
ザクレロの戦闘能力を高く評価しているデミトリーが果敢に挑戦。
ザクレロの圧倒的なスピードに翻弄されるアムロが見ていて歯がゆかったです。縦横無尽に駆け巡るザクレロに手も足も出ないといった状態。
そのうちにザクレロがガンダムに激突。
そのショックでパイロットのアムロは意識を失います。
ガンダムはザクレロのナタのような腕と拡散ビーム砲の発射部分である口の間に引っかかって身動きできなくなったまま止まっています。
「えっ、これからどうなる!?」
この予想外の展開に唖然として驚きました。
通常であれば、主人公が攻撃に耐えながらも相手の弱点を探し、チャンスをうかがって防御から攻撃に転じるというのが、ひとつの対決もののパターンです。
しかしこの場合、意識を失っているのでパターンが成り立ちません。
それどころか、パイロットが戦闘の途中で失神してしまうなんて前代未聞。
絶体絶命のピンチでした。
引っかかっているのが拡散ビーム砲のまん前なので、いつやられてもおかしくない状態でスリル満点。
幸い、デミトリーはガンダムを見失い、どこへ行ったんだと探しています。
アムロは意識を失ったまま。
眼はうつろで表情を失い、口からはよだれを垂れ流しています。回復する様子は見られません。
「失神したままじゃ絶対にやられちゃう。主人公がこんなに弱いロボットアニメって…。どうなるんだろう」とハラハラドキドキでした。
そのうちにデミトリーはガンダムが引っかかっていることに気がつきます。
拡散ビーム砲を撃とうとするのですが、その瞬間に何故かアムロの意識が戻ります。
ザクレロよりも一瞬早く反応して、間一髪でガンダムのビームライフルが炸裂。
こうしてザクレロを撃破することができました。
見ていて爽快感というよりも九死に一生を得て、ほっとしました。
第32話のストーリーとしては、そのあとシャアがドレンと連絡を取り、ホワイトベースを挟み撃ちにしようとしますが、シャアが追いつく前にホワイトベースが迎え撃ち、リックドム六機の護衛もむなしくムサイ艦は三隻とも撃破されてしまいます。
シャアはすぐさまホワイトベースの進路を推定すると、サイド6へと進路を向けるというものでした。
後半でチームとしてドレンの部隊を撃破するホワイトベースの中心にはガンダムの活躍があります。
ですが、それを見ても前半の対ザクレロ戦でのふがいなさが印象に残りました。
途中で意識を失うような弱さでこの後も戦っていけるのか、勝ったのはラッキー以外の何者でもない、あのタイミングで意識が戻ったのはご都合主義、というような印象が残りもやもやした感じでした。
ファーストガンダム全体を通して見た後に、途中で意識を失うような絶体絶命のピンチはこれ一回きりということがわかりました。
レアなエピソードだったことが判明するのですが、その時点では戸惑いは大きかったです。
劇場版三作目では人物関係やドラマ部分が優先されて、戦闘エピソードはカットされているものも多いです。
劇場版しか見ていない方はテレビ版を見ることで、そうしたカットされている隠されたエピソードを新鮮に感じて楽しめると思います。
ファーストガンダムが今でも人気である理由
僕とファーストガンダムとの出会いについてはここまで語ったとおり。
では、ここからファーストガンダムがなぜ今もなお高い人気を獲得しているのかを考察していきます。
シリーズものは1作目が支持される傾向
ガンダムに限らず、シリーズ化されているアニメ作品はたくさんあります。
さらにそれは、アニメだけにとどまらず、映画やドラマでもシリーズ化されている作品は多い。
そんなシリーズものの評価で多いことは、最初の1作目が一番支持される傾向が強いこと。
ファースガンダム以降の続編に関しては、画質が向上して話の内容もスケールアップしていきました。
しかしここで言えることは、画質と話のスケールが向上しても続編が必ず面白くなる訳ではないことです。
ファーストガンダムの続編は「Zガンダム」。
富野由悠季/名古屋テレビ・創通エージェンシー・日本サンライズ
アニメ「Zガンダム」より引用
Zガンダムはファースよりも画質が向上して、話のスケールも大きくなりました。
しかし、Zガンダムはファーストガンダムに比べると、登場人物の関係と話が複雑になってしまい面白くないと感じる人がいるようです。
ですが、逆にガンダムのシリーズの中では、Zガンダムが一番好きだと言う人もいます。
ただ、続編のZガンダムが好きな人がとても多ければ、ファーストガンダムを超えたという話になるのですが、そのような話はあまり聞きません。
ここからは僕の個人的な考えも入りますが、ファーストガンダムがなければ、続編のZガンダムは生まれてこないはず。
シリーズものは1作目が支持されると言いましたが、その理由は1作目が存在しないと続編が存在しないことが大きな理由ではないでしょうか。
続編の前に1作目があることは、続編がいくら面白くても変えることができない事実なんです。
ファーストガンダムはその後のアニメのベースになった
ファーストガンダムが登場してから、そのあとは数え切れないほどのアニメが作られました。
そして、ファーストガンダムが出た後のアニメの多くは、ファーストガンダムの影響を受けています。
特にロボットが出てくるアニメへの影響が顕著。
しかしロボットだけではありません。
ファーストガンダムのストーリーとキャラクターも、その後のアニメに強い影響を与えています。
ファーストガンダムのストーリーを見ると分かるのですが、かなり理解がしやすい内容になっています。
理解がしやすい理由は、登場人物を見ると分かるでしょう。
ファーストガンダムに出てくる登場人物の多くは大きな魅力があり、見終わった後も忘れられないような強い印象を与えてくれます。
続編や派生作品のガンダムにも多くの魅力的な人物が登場しますが、それらの多くはファーストガンダムの影響を受けています。
つまり、ファーストガンダムはその後のアニメのベースになっているのです。
ゲーム化されてファーストガンダムが再評価された
ガンダム関係の作品はゲームとの相性が良いです。特に最近のゲームは画質が向上していますので、ガンダムに出てきたモビルスーツたちを自由にゲーム内で動かせます。
ガンダム関係のゲームの中で大人気となったものは、ガンダムを知らない世代にもプレイされています。
そして、特に初期のガンダムを知らない世代がガンダムのゲームをプレイしていると、ゲームの元になっているストーリーを知りたくなるでしょう。
そうなると、ガンダムを知らない世代もガンダムの作品を見ることになります。
そのため、それがファーストガンダムの再評価へと繋がったはずです。
ガンダムを知らない世代がストーリーを知りたいのであれば、1作目のファーストガンダムから見始めるでしょう。
初期のガンダムのストーリーは、ファーストガンダムから繋がっていますから、最初から見ないとストーリーの理解がしにくいのです。
ファーストガンダムの続編を引っ張らないで終わらせた
ガンダムの派生作品は現在でも作り続けられていますが、派生作品が多く出てきた理由は、ファーストガンダムの続編をほぼ完全に近い形で終わらせたからでしょう。
ファーストガンダムから続いた話は、逆襲のシャアという映画で完結しましたが、これは本当に完結しています。
ファーストガンダムから直接繋がっているような作品は、一部の例外を除いてはありません。
続編をすっぱり終わらせたので、派生作品を作りやすい状況になりましたし、ファーストガンダムの再評価がされることが多くなったのだと思われます。
もし、ファーストガンダムから続く話をその後も長く続けていたら、ファーストガンダムの評価は今と変わっていたのではないでしょうか。
インターネット上で話題にされた
インターネット上の掲示板やSNSでは、ファーストガンダムがよく話題に上がります。
ガンダム作品の名言などが、インターネット上で使われることが多いのですが、特にファーストガンダムの内容は使われやすい。
その理由はシンプルに考えると、ファーストガンダムの登場人物とストーリーがよくできているからでしょう。
よくできているので、インターネット上で扱いやすいと考えられます。
それから、インターネット上の情報は不特定多数の多くの人が見ますから、ファーストガンダムのことは多くの人に知られたのだと考えられます。
1作目のガンダムが今でも一番面白い理由について、色々と話をしてきましたが、結局最後に行き着くところは、作品の良さになるようです。
これからもガンダム関係の作品は多く作られていくでしょうが、ファーストガンダムの存在の大きさはこれからも変わらないでしょう。
さて、続いてはガンダムがいかに新しいものであったのかという点、そして子供向けアニメを脱却できていない点を考察していきます。
ファーストガンダムの新しいところ
1970年代から80年代のアニメは悪のロボットを正義のロボットがやっつけるストーリーが大半でした。
敵のロボットは多くは一体で、正義のロボットも主力は一体であることが多かったと思います。
ガンダムは量産型という概念を本格的に導入したアニメだと思います。
友軍のジムやボール、敵軍のモビルスーツも同じ機種が何機も出てきました。現実世界でも戦闘機や戦車は同じ機種が多数装備されています。
現実世界に少し近づいた設定だと思います。
補給の重要性も描かれたのは画期的だと思います。
ビームライフルを打ちすぎればエネルギー切れを起こすし、補給をする輸送部隊も命がけの輸送作戦を敢行して物資を届けます。
これまでのアニメでは修理をすることはあってもここまで補給、ロジスティクスを重視したアニメはこれまでになかったと思います。
最後は、ガンダムが特別な機体ではないということ。
もちろん、主人公機なので桁外れの強さでしたが、壊れれば動かなくなりし、弾切れは起こします。
乗り手によって強さも大きく変わりました。
これはガンダムが超常的な兵器ではなく、人が造り、人が操縦するごく一般の兵器であるといえます。
最近のガンダムとは一線を画すもの。
こういった設定、描き方が他のアニメと違うガンダムの新しさだと思います。
ファーストガンダムが子供向けアニメを脱却しきれていないところ
いかにガンダムといえども、1970年代のアニメの影響を受けています。
僕が感じる「子供向けアニメを脱却しきれていない」という点を3つ上げたいと思います。
1つ目は、敵軍モビルスーツが怪獣的なフォルムであるということ。
基本的に敵軍のジオン軍モビルスーツはモノアイといって一つ目だし、とげが生えていたり、指がかぎづめだったりと、それ以前のロボット物の敵ロボットのスタイルを踏襲しています。
特に大型のモビルアーマーと呼ばれる一群はその傾向が強く出ています。
2つ目は、物語後半は毎回のように新しい機体が登場し、まるでかつてのロボット物の敵ロボットのようです。
テコ入れのためであったとか、打ち切りが決まったので早めに出したとか言われています。
3つ目はオープニング。
主人公が雄たけびをあげてピストルを撃ったり、ノリノリで戦闘機に乗り込んだり。本編ではおそらくやったことがないと思います。
おそらくそれまでのアニメの熱血主人公を引き継いでいるのでは・・・。
また、歌詞の中にも「正義の怒りをぶつけろ」という歌詞もあるんです。
本編では戦争に正義などないという描写が多くあります。
友軍だって正義とはいえない行為をしています。
この辺りはまだヒーロー物を脱却しきれていないところ。
ただ、それがいけないとは思いません。
一気に進化することはできないもの。
徐々に進化していく過渡期のものとして考えればよいと思います。
やはりガンダムは面白い
長々とファーストガンダムについて語ってきましたが、こうして改めて文字にしてもガンダムはとても魅力的な作品。
今見ても新たな発見があります。
いい年した大人がひきつけられるのもそれだけガンダムという作品がすばらしい証拠。
これからもガンダムは好きでいつづけるでしょう。