今回は、アニメ「カウボーイビバップ」についてご紹介します。

1990年代に放送されたのにも関わらず、今もなお語り継がれるアニメ業界の名作。

かっこよさと笑いを組み合わせた非常に奥深い作為品です。

それ故に名言が多く・・・なにやらハリウッドで実写化作品が制作されているとか。

そんな「カウボーイビバップ」の魅力を紹介します。

 

 

カウボーイ・ビバップは1990年代に放送されたSFアニメです。

舞台は火星や金星、荒廃した地球のほか様々な星と宇宙空間。

主人公は賞金稼ぎスパイク(声優:山寺宏一)で、相棒のジェット(石塚運昇)、記憶喪失だが強かなヒロイン・フェイ(林原めぐみ)と天才ハッカー少女エドワードと同じく天才犬アインをメインメンバーにオムニバス形式の物語です。

 

基本的に話は賞金首を追う彼らの日常で、それぞれの持つ過去や背景が明らかになりながらスパイクが過去との決着をつける話になっています。

1990年代特有の設備のレトロ感やハードボイルドが好きな人にはたまらない雰囲気の作品です。

賞金首との闘い等、残酷なシーンが苦手な方は避けた方がよいかもしれません。

他の作品との対比でいうと銀魂は笑いをとりつつ泣かせに来ますが、カウボーイ・ビバップは笑いと涙の比率が逆になっている感じです。

 

 

アニメ「カウボーイビバップ」とはどんな作品?

矢立肇/サンライズ、バンダイビジュアル
アニメ「カウボーイビバップ」より引用

 

今回はこの作品のテーマについて考えていきたいと思います。

 

この作品のキーワードは主人公の言葉で言うなら「醒めない夢」でしょう。

 

多くのキャラクターが人生を夢に例えるシーンが出てきます。

この作品では多くの賞金首が出てきます。(カウボーイ・ビバップでは大塚明夫等有名な俳優がチョイ役で何人も出てくるところも見どころですね)

第1話では恋人と一緒に超危険な麻薬を持ち逃げしマフィアから逃げる賞金首の話でした。

彼は麻薬の肉体強化効果で彼女を守り逃げ続けましたが、最終的には副作用で破滅し、彼女とともに死んでしまいました。

 

他に出てくる賞金首に公害の副作用で不老不死になった少年、人体改造され発狂したまま殺し歩くシリアルキラー、死ぬまでチェスの相手を探し求め最期には1週間不眠不休で遊んだあと眠った老人、全身不随のままネットワーク内で人を洗脳し続ける男。

彼らはある意味「醒めない夢」の中で生きていました。

 

そして、多くの話は彼らの「夢」が醒める(あるいは醒めてしまう)物語と言えます。

 

マフィアから逃げた二人は破滅した男を救うために女が引き金を引いて終わり、不老不死になった少年は特効薬を打たれて死に、シリアルキラーは踏みつぶされ、チェスの老人も全身不随の男も終わりを迎えました。

主要人物たちも、自分の迷い続けていた自分の人生を新しく進める地点に立ち、スパイクと道が分かれていきます。

では、主人公のスパイクが見ている「夢」とは何だったのか。

 

スポンサーリンク



 

スパイクはかつてマフィアの幹部候補で優秀な戦闘員でした。

そのころには同様に優秀で、しかし残忍な、相棒ヴィシャスとともにいました。

スパイクの所属していた組織は彼の恩人が幹部となり取り仕切っていた仁義のある組織でした。スパイクはこの組織から離反することになるのですが、それは組織に対して不満があったためではありません。

 

彼はある日、瀕死の重傷を負った状態で道に投げ出され、その時助けてくれた女性に恋をしたのでした。

その名前はジュリア。

ヴィシャスの女でした。

 

スパイクの過去は本編出はあまり明確に描かれていない(記憶の断片のようなシーンで紹介されるかEDの画像のみ)のですが、組織にいる時点でくっついて、しかもくっついたのはヴィシャスにバレていたようです。

組織から逃げる段取りを整えたあとにスパイクはジュリアに待ち合わせ場所を伝えましたが、彼女は現れませんでした。ヴィシャスにそのことすら知られていたから待ち合わせ場所に行けなかったのでしょう。

彼女は別の方法で組織を離脱していきました。

 

 

さて、アニメ本編のスパイクはというと、待ち合わせ場所に現れなかった彼女のことを気に留めながら賞金稼ぎ稼業を続けているのでした。

気に留める、とは言ってもよくある名前の「ジュリア」というコードネームを見つけたら果ての星まで飛んでいくくらいの気に留め方なので、今もスパイクはジュリアが大好きなわけですね。

そして、それこそが彼の見ている「夢」ということになります。

 

最終的にスパイクは彼女と巡り合えるのですが、スパイクに裏切られたヴィシャスとの確執によって発せられた追っ手によってジュリアは命を落としてしまうのでした。

死の間際のジュリアのセリフも「これは、夢ね」であり、スパイクの返しも「ああ、悪い夢さ」なのです。

スパイクは組織を乗っ取ったヴィシャスに対し(後輩の援護を少し受けつつ)単騎特攻をしかけ、ヴィシャスを撃ちとります。その後、スパイクの「夢」も終わったのでした。

 

スパイクをはじめ、彼らは長い「夢」を見ていた、という話しでこの作品のテーマはまとめられるでしょう。

 

 

ところで、カウボーイ・ビバップの第1話は何の話だったのか、覚えてますか。

そうです。

麻薬を持ち出して組織を逃げ出そうとした二人の男女の話です。

 

最終話を見てから、第1話に戻ると何とも言えない気もちになります。

彼らの「夢」の見方はある意味スパイクとジュリアにそっくりでした。

追われて救いのない悪夢のようです。

ジェットやフェイのように生きたまま悪夢が(一旦)終わった人もいれば、不老不死の少年やシリアルキラーたちも死でもって悪「夢」から醒めるひともいました。

スパイク・ジュリアも後者でしょう。(あるいはヴィシャスも)

 

 

こんな悪「夢」のような話にとても悲しい気持ちになります。

でも、毎度カウボーイ・ビバップのEDはこう締めくくるのです。

「泥の河に浸かった人生も悪くはない/一度きりで/終わるなら」