「家族」。
それは誰もが持っている(または持っていた)、身近なモノ。
最小単位の社会とも言われる家族。
血が繋がっていたり、いなかったり。
その中には、家族だからこその幸せも、時には不和や、すれ違いもあるでしょう。
今回はそんな家族関係が登場する作品を、ご紹介させて頂きます。
サザエさん
家族モノと言えば外せない、国民的アニメです。
「サザエでございまーす!」
「ジャン、ケン、ポン!」
など、日曜夜の象徴であり、お馴染みのフレーズを多数生み出した番組でもあります。
本作は長谷川町子先生の、同名漫画が原作。
原作のシリーズ開始が戦前だけあり、主人公の磯野一家は、現代ではもう珍しい、三世帯同居の大家族です。
ちなみにテレビアニメも、もう50年近く放映しているのだとか……凄い!
磯野家について、簡単にご説明します。
まず、家長の磯野波平と、その妻のフネ夫婦。
長谷川町子/朝日新聞社・TCJ動画センター→エイケン
アニメ「サザエさん」より引用
そして夫婦の長女であるフグ田サザエと、夫のマスオ夫婦。
長谷川町子/朝日新聞社・TCJ動画センター→エイケン
アニメ「サザエさん」より引用
二人の間に生まれた息子のタラオ。
長谷川町子/朝日新聞社・TCJ動画センター→エイケン
アニメ「サザエさん」より引用
サザエの弟のカツオと、妹のワカメ。
長谷川町子/朝日新聞社・TCJ動画センター→エイケン
アニメ「サザエさん」より引用
実に7人の大家族です。
ちなみに、タマと言う名の飼い猫までいます。
核家族が多い現代において、磯野家はある種の「古き良き、日本の家族」の象徴かもしれません。
一戸建ての家があり、しかも懐かしの縁側までついている。
イタズラすると降ってくる、怖いお父さんの「馬鹿もん!」という叱責。
ただし波平さんはどこか抜けていて愛嬌があり、雷親父というには可愛いらしい気がしますが………。
和服のお父さんに、割烹着にまとめ髪のお母さん。
主人公のサザエさんは24歳とのことですが、既に既婚者で子持ちというのも、今の感覚だとやや早いように思われます。(もちろん、色々な方がいるのは承知の上で)
またサザエさんが、どこか懐かしいパーマネントヘアであり、格子柄の巻きスカートといい「昭和の若奥さん」風なのも、ややレトロな印象。
マスオさんは現代にいても違和感がありませんが、坊主頭のカツオに、おかっぱヘアのワカメ、刈り上げのタラちゃんなど、「これは……一体、いつの時代なんだ……?」と、ふと疑問が浮かんできます。
酒屋さんの御用聞き(ご家庭を訪問し、注文を承る)サブちゃんというキャラクターもいますが、少なくとも私はサザエさん以外で、本物の御用聞きとお会いしたことがありません。
昔は珍しくない存在だったのでしょうが……。
そういえば近年、サザエさんの番組スポンサーが、長年続いた東芝から代わると話題になりました。
通販大手のAmazonがスポンサー候補になり、「その場合、作中で通販が普及して、サブちゃんが失業してしまうのでは?と視聴者が心配したのは記憶に新しいです。
もしくは、サブちゃんが通販の運送ドライバーに転職するのでは?という意見も。
そんなことを考えるほど、私達視聴者にとって、サザエさんのキャラクターは身近な存在なのでしょうね。
しかし、時代が変わっても変わらない、暖かい家族の姿がサザエさんの中には描かれています。
年が離れていても、仲が良い兄弟姉妹。
母と娘が台所で並んで料理をし、舅と婿が晩酌を酌み交わす。
子供は原っぱで野球をし、猫が縁側で、のんびりお昼寝。
夜は家族でちゃぶ台を囲んで、一緒に夕飯を食べる。
住宅事情でペットを飼えなかったり、野球をする場所がなかったり。
両親が共働きで、なかなか一緒に食事を摂れなかったり。
現実にはなかなか実現出来ない、小さな願いを代わりに叶えてくれる。
サザエさんには、そんな一面もあるのかもしれませんね。
「現代の家庭事情と違い過ぎる」
「古き良き価値観の、押し付けになる」
時にサザエさんへの、そんな批判意見も目にしますが……出来ればこのままずっと、変わらずにいて欲しいものです。
銀魂
そしてサザエさんと異なり、「血が繋がらない家族」として挙げたい作品……多数ある中で、私は銀魂を推します。
テレビアニメも原作漫画も、長年続いている本作。
現在、原作がいよいよ佳境に入っていますが……。
「銀魂」の核になる三人、銀さんこと銀時と、新八、神楽。
©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
アニメ「銀魂」より引用
そして飼い犬(厳密には犬じゃないけど)の定春。
この三人と一匹は、血が繋がっている訳でもなく、生まれ育った環境もまるで異なります。
でも「万事屋銀ちゃん」に集い、ともに過ごすうちに、掛けがえのない関係になりました……。
遠慮のないやり取りや、思いっきり素の自分を出している感じ。
彼らの間にある空気は「仲間」や「友人」というより、やっぱり「家族」に近いと私は感じるのです。
本作の主人公・銀さんは「万事屋銀ちゃん」を営む侍です。
天人(あまんと)に戦で負け、征服され、侍が廃れる一方のお江戸の街で、自分の生き方を貫く銀さん。
普段はいい加減だし、ろくに働かないし、かなりのダメ人間なのですが……
決して許せないモノの前では、絶対に退かず諦めない、不屈の侍になります。
実は彼は、かつての戦で「白夜叉」と恐れられた歴戦の戦士。
しかし恩師を守れず、戦に負け、共に戦った仲間たちも散り散りに……。
かぶき町で漂うように暮らしていました。
そんな彼の許に集ったのは、迷える子供と犬たち。
未熟な侍の少年・新八。
©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
アニメ「銀魂」より引用
「夜兎」と呼ばれる宇宙人で、密入国で地球にやって来た少女・神楽。
©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
アニメ「銀魂」より引用
そして一見巨大な犬で、実は恐るべし秘密を持つ定春。
©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス
アニメ「銀魂」より引用
彼らはいい加減なようでいて、優しく芯の通った銀さんに惹かれ、共に万事屋の仲間になります。
ロクに給料も払わず、昼間から飲んだくれてパチンコ三昧の、ダメ雇い主。
でも彼らは知っています、銀さんはどんな時も決して仲間を見捨てない男だと。
万事屋のメンバーは敵味方、たくさんの人々と出会い、それらを時に助け、時に戦い、困っている人の力になってきました。
息子を奪われそうになっている、若い母親。
ある女性を助ける為、危険な夜の街「吉原」へ潜入しようとする少年。
職場にも家庭にも居場所のない、孤独な中年男。
息子の仇を討とうとする、機械職人の老いた父親。
スケールが大きい事件から小さい事件まで、文句を言いながら乗り越えていく面々。
時にメンバーの過去や、彼らの実の家族が絡んでくることもあります。
かつての仲間と道を違え、敵対した銀さん。
父母を亡くし、武士の誇りも分からず、生きる道に迷う新八。
母を亡くし、父と遠く離れ、道を外れた兄を持つ神楽。
道端に捨てられていたところを、神楽に拾われた定春。
全員、実の家族がいないか、失った者ばかりです。
そんな孤独な三人と一匹が集まり、いつの間にか新しい家族のようなモノになっていた……。
気が付けばメンバーの家族や友人、かつての敵など、どんどん新たなメンツが加わり、気づけば万事屋は大所帯に。
家主の老女・お登勢や、従業員のキャサリンも孤独な境遇ですが、大切な仲間の一人です。
下ネタ、メタ発言、ギリギリなパロディ……過激なツッコミや展開が多く、登場人物は誰一人として、お上品ではありません。
でも、そんなところが銀魂らしいのかな、と思ったりも。
乱雑で下品で、物騒で……でも賑やかで、なんだか暖かい。
彼らが住まう町「かぶき町」のような、そんな関係が魅力なのだと思います。
もはや名実ともに家族となった、万事屋。
原作はもうすぐ終了ですが……どんな結末を迎えるのか、また最後までアニメ化してくれるのか。
しっかり、終わりまで見届けたいと思います。
以上が家族をテーマにした心に染み入る作品2選。
今後も随時執筆していきますのでお楽しみに!