何かと話題の、放送中の「ゲゲゲの鬼太郎」。
4月から始まった第6シリーズは絵の美しさ、現代の時事ネタを取り入れた内容など、必見の内容です。
そんな鬼太郎ですが、2018年4月27日放送(首都圏では)の第9話「河童の働き方改革」は、特に大人に刺さる内容でした。
そして、それでいて今までで一番の爆笑ギャグが炸裂……。
ギャグなのかシリアスなのか、どうとも取れない。
けれど、素晴らしい回でした。
今回は、その素晴らしさを拙いながらプレゼンさせて頂きたいと思います。
「鬼太郎?日曜朝だし、子供向けでしょ」と侮るなかれ。
確かに子供向けだけど、大人にこそ刺さる回も多いんです……!!
あと、とにかく頭を空っぽにして笑いたい人にもオススメな回です(笑)。
ゲゲゲの鬼太郎6期、9話あらすじ
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
「河童の働き方改革」
なんだか、話題の法案を思い出すタイトルですよね……。
内容も、現代社会を見事に反映しており、色々と身につまされます。
遠野の山奥で平和な生活を送る、河童たち。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
美しい川辺で相撲をとり、大好きなキュウリを栽培して食べていました。
しかし、一日に獲れるキュウリの数には限りがあります。
弟の次郎丸にお腹いっぱいキュウリを食べさせたいと考える、兄の太郎丸。
同じ頃、ねずみ男は今日も金儲けの為に悪知恵を働かせていました。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
「IT企業の社長であるお父さんが、仕事に没頭し過ぎて帰ってこない。家族にも無関心で、妖怪に憑りつかれたに違いない」という幼い女の子の訴えに、「妖怪いそがしのせいだ」とアタリをつけます。
ところが、それは勘違い。
ただでさえ忙しい現代人の前では、いそがしの出る幕はありません。
例の父親はただの仕事中毒だと分かり、ガッカリするねずみ男。
しかし、人材を求める父親に会い、悪だくみを考えつきます。
すなわち、河童たちを会社で働かせること!
人間と違い、キュウリ3本の時給で遅くまで働く河童なら、人件費もかかりません。
都会に連れて来られた河童たちは、スーツを着て朝から晩まで働き始めます。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
頭の皿が乾かないよう保湿ジェルを塗り、キュウリを励みに労働に明け暮れる河童たち。
社長も大喜びです。
しかし「意識高い系河童」である太郎丸は、コンビニの求人情報を見て、自分達の待遇の酷さに気付きます。
本当なら最低賃金も、労働時間も法律で決まっている!
自分達は酷い条件で搾取されている!
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
怒り狂った河童たちは社長に詰め寄りますが、社長(ミナミの帝王の主人公似)は一蹴します。
法律は人間にしか当て嵌まらない、河童を雇うコンビニなど無いから、お前たちはここで働くしかない。
しかし、河童たちは反旗を翻します。
社長の尻子玉(肛門付近にあるという器官)を引き抜き、夜の街で大暴れを始めました。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
道行く人を襲い、尻子玉を奪って脱力させていく河童の群れ。
街は大パニックになります。
カッコ良く登場した鬼太郎も、あっという間に尻子玉を抜かれてグダグダに……。
そこで出て来たのが、前述の妖怪「いそがし」でした。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
放心した鬼太郎に憑依すると、あっという間に三倍速の超スピードに!
河童たちを懲らしめ、リモコン下駄やちゃんちゃんこで、お仕置きをしていきます。
最後に残ったのが、太郎丸。
鬼太郎といざ決戦、という時にやって来たのが、弟の次郎丸。
「兄ちゃん、ここは僕たちのいる場所じゃない」と、涙ながらに訴えます。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
鬼太郎に奪った尻子玉を返し、河童たちは森へ帰ることに……。
また遠野の森で、穏やかな生活に戻りました。
「キュウリは、その日に食べる分があれは十分」と笑う太郎丸・次郎丸の兄弟。
そしてブラック企業の社長は夢うつつの中、かつての家族との暮らしを思い出していました。
妻と娘と過ごしていた、楽しい時間……。
本当の幸せは家族と過ごすこと、と知った彼は悔い改め、涙を流します。
ちょっと行き過ぎて、いきなり家族と田舎暮らしを始めようと暴走して、ソッポを向かれてしまいましたが。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
今まで家族を顧みなかったのに、いきなり古民家に引っ越すぞ!と言われてもねえ……。
結局、この社長は極端な性格なのでしょうね。
そんな彼を見た目玉の親父は「働き過ぎもスローライフも、行き過ぎずにちょうど中間が良いのじゃ」と呟きます。
本当にそう!
労働は大切だけれど、心を亡くすほど忙しいのは、本末転倒です。
ブラック企業、過労、ワーカホリック……。
河童でマイルドになっているけれど、現代の世の中を、ドキリとするほど映している内容でした。
ゲゲゲの鬼太郎6期、9話の感想
前述の通り、河童をテーマにしているからどこかユーモラスで、おかしく感じますが……。
これを河童から人間に替えてみると、驚くほどリアルな現実を映していることに気付きます。
仕事中毒の社長は、ブラック企業の象徴だし。
家族を顧みず働く姿は、深刻なモーレツ社員の典型ともとれます。
そして労働基準法も知らず連れて来られ、酷い条件で働かされる河童たち……。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
彼らは違法に働かされる、外国人労働者に近い存在に思えてきます。
法律を知らないから違法だと分からず、訴えることも出来ない。
外国人だから、不法滞在だから、誰にも助けを求めることが出来ず、我慢するしかない。
そう思って見ると、とてもシビアな内容です。
今回の話は……。
そして「幸せとは何か」というテーマにも触れています。
お金も大事、仕事も大事。
でも家族を顧みず、余裕の無い生活は心をすり減らす……。
「忙しいとは、心を亡くすと書くんじゃ」目玉おやじの言葉が沁みます。
現代人の幸せは、人それぞれ。
一人一人が、自分にとっての幸せを見つけていくしかないんですよね。
絶妙なギャグ回
そして上記の重いテーマを孕んでいながら、今回は素晴らしいギャグ回でもあります。
そもそも、河童がスーツを着て、IT企業で働いていることが可笑しいし。
河童たちのアクションが本当に良い動きで、宙を飛び、尻子玉を抜き取り、街中で所狭しと暴れまくる……。
パニック映画のような行動と、河童という外見のギャップがヘンテコで笑えてきます。
そして、尻子玉を抜きまくる場面の可笑しさ!
カッコ良く登場した鬼太郎も、決め台詞の途中で尻子玉を抜かれてしまうし……。
恍惚とした表情で倒れ、ヘロヘロな主人公。
ぬりかべも一反木綿も、尻子玉を抜かれて全滅です。
「どこが尻か分からんじゃろ~」「ここだーっ!!」
なに、この絶妙なやり取りは……(笑)。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
クールビューティなねこ娘も、熟女の砂かけばばあも、尻子玉を狙われてタジタジ。
赤い顔でお尻を抑えて、逃げまどいます。
「きゃーっ!やだーっ!」と逃げるねこ姉さんの、可愛さよ……。
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎6期」より引用
それを追いかける、河童の大群。
薄い本みたいな情景です。
いいのでしょうか、こんなエロ同人みたいな展開を……日曜朝から……。
なんともいえず可笑しくて、最後まで笑いっぱなしでした。
現代社会を鋭く風刺しながら、キレの良いギャグが炸裂。
個人的に、今までの鬼太郎で一番面白かった回です。
「すねこすり」のように、悲しい最後ではなかったですし。
それにしても、ギャグ、萌え、ホラー、風刺……。
色々なテーマを扱った内容ですね、今期の鬼太郎は。