田村ゆかり、と言えば声優業界にその名を轟かせる永遠の歌姫である事は異論ないと思います。

そんな田村ゆかりさんが2018年5月現在、日曜朝は「HUGっと!プリキュア」にて敵方の重要キャラクター「ルールー」役を、また深夜アニメ「Lost Song」にて重要キャラクターである「フィーニス」を演じています。

この2作品、絵柄も作品の方向性もまったく違います。キャラクターにおいてもルールーとフィーニスでは間逆なキャラクターですが、幾つかの共通点が見られます。
そのキーワードは「現代社会の光と闇」と「音楽」です。

 

 

HUGっと!プリキュアと田村ゆかり


©ABC-A・東映アニメーション
アニメ「HUGっと!プリキュア」より引用

 

まずは「プリキュア」。

田村ゆかり演じるルールーは悪の組織にしてブラック企業、「クライアス社」にアルバイトとして所属しています。

 

この設定だけ聞いて、日曜朝の女児アニメにまで現代社会の闇が迫っていると驚愕する人もいるでしょう。

プリキュアがんばって。

 

さて、このクライアス社から最初の刺客として送り込まれたチャラリートというキャラクターがいます。

 


©ABC-A・東映アニメーション
アニメ「HUGっと!プリキュア」より引用

 

彼はプリキュアに負けた挙句、社内で降格させられ連れて行かれ、最終的には悲しい怪獣として望まない形でプリキュアとの戦いに挑まざる得なくなります。

全社畜が涙した瞬間で。

 

チャラリートは紆余曲折あって新しい力に目覚めたプリキュアが「音楽の力」で彼を優しく包み込み、浄化されます。

ここで全社畜の涙が倍プッシュします。

 

その後、田村ゆかりさんが演じるルールーもまた、プリキュアの力の核心に近付いていく中で音楽に触れ、心を動かされていきます。

敵方の重要キャラ(ブラック企業所属)ながら音楽の力で光への希望を見出し始めていると言ったところでしょうか。

 

 

Lost Songと田村ゆかり


© MAGES./LOST SONG製作委員会
アニメ「Lost Song」より引用

 

さて一方で「Lost Song」はそのタイトルと田村ゆかりさんのキャスティングから「音楽の力」が深く関わってくる作品だというのは、アニメファンならば一瞬で理解した事でしょう。

実際に、作中で田村ゆかりさん演じるフィーニスは王都の歌姫。

 


© MAGES./LOST SONG製作委員会
アニメ「Lost Song」より引用

 

しかもただの歌姫ではありません。

彼女が歌えば大量の水が沸き起こり、傷ついた人を癒す奇跡を起こします。

 

そんな彼女の奇跡を起こす歌は、戦争を企む心ない王族や一部の軍人達に利用されていきます。

勿論、彼女は戦争に利用される事を拒絶します。

しかし、彼女は愛する人の命を救う為に、奇跡の歌で敵軍を制圧せざるを得なくなり、身も心も病んでいきます。

 

現代社会でも望まない仕事を強要される事で身も心も磨耗していく事は多いでしょう。

また、アイドルや芸能の世界に憧れた少女が事務所から望まない活動をさせられる、なんて話が時々耳に入ってきますが、それも現代社会の闇の1つと言えるかもしれませんね。

 

現代社会の闇の中で音楽に希望を見出した「プリキュア」と、その音楽という希望すらも飲み込む闇を描いた「Lost Song」と言った所でしょうか。

闇に差し込んだ光と、光を飲み込んだ闇。SNS上の書き込みを読んでいると、現代社会に生きる人達はそれをファンタジーだと理解していながらも完全なフィクションの世界とは思えず、自己投影をし、沼にはまっているようにも見えます。

 

そして、その中心にいるのは間違いなく声優界の永遠の歌姫・田村ゆかりさん。

田村ゆかりさんの声と演技は本来、自己投影の対象になり難いほどクセがあります。

 

ですが、プリキュアのルールーもLost Songのフィーニスも、田村ゆかりというバイアスに掛けられ屈折しながらも心に迫り、傷を負い疲弊した我々の本当の姿を映し出してくれるのではないでしょうか。

 

 

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ここ数年、上坂すみれさんや竹達彩菜さんといった新世代の歌姫声優ばかり話題に上がりますが、まだまだ田村ゆかりさんから目が(耳が?)離せないのは言うまでもありません。

それぐらい田村ゆかりさんは格の違いを見せ付けてくれます。

 

彼女は光と闇だけではなくその狭間と葛藤を表現し、「光から闇へ」「闇から光へ」を直線的なベクトルではなく、明確な方向を示しつつもどこか曖昧さを持たせた演技で曲線を描くことが出来る稀有な存在なのです。

 

詳しい事は言えませんが、特にLost Songで魅せる田村ゆかりさんの演技は彼女の集大成と言っても過言ではないでしょう。

もう重みが違いすぎます。

 

彼女が劇中で披露する数々の歌も「光と闇」の体現に一役買っています。

プリキュアに於いては確かに女児向けという事もあってかそこまでドスを効かせませんが(全幼女が泣きます)、じっくり視聴するとルールーの中にある矛盾と葛藤から来るドスの効いたバックグラウンドを表現した上で、子供向けに調整した演技をしています。

 

まだ歌等は披露してはいませんが、展開的には期待できそうな流れもあります。

ここまで来ると集大成ではなく、彼女は声優として歌姫として、我々には想像し得ない新しい境地へと足を踏み入れたのかもしれません。

 

 

さて、恐ろしく深読みをし過ぎてしまいましたが、今期の田村ゆかりさんは筆者の心にそれ程迫ってくるものがあります。

そして、どちらの作品も音楽が素晴らしい作品でもあるので、そういう意味でも注目して下さい。

 

最後に、今期の田村ゆかりさんは筆者にとって「一筋の希望の光」なのか、「それを喰らおうとする闇」と成るのか。

出来れば光であって欲しいので全力でプリキュアを応援したいと思います。